4カ月ぶりの合法デモは平和的だった

12月7日からの10日間、2カ月半ぶりに香港を訪れ、デモに参加する抗議者や市民の姿を取材した。

入国の翌8日は、6月9日の100万人デモから半年を迎える週末で、80万人が香港島を東から西へと練り歩いた。

約4カ月ぶりに香港警察の許可が下りた民陣(民間人権陣線)主催のデモ行進だったこともあり、平和的な市民が数多く参加した。

午後3時にスタート地点、銅鑼湾(コーズウェイベイ)に集まった人たちは緊張に包まれていた。警察はこれまで幾度も終了時間を前倒しして、「この場にいる者は違法である」と理不尽な逮捕を繰り返してきた。

この日も夜10時まで許可が下りていたが、誰も警察を信用していなかった。若い抗議者らは、秘匿性の高いSNSテレグラム内で「何時に短縮されるか」を巡り投票を行っていた。4時、6時を予想する投票が多かったようだ。

結果として、その日は抗議者と警察の激しい衝突はなく、おおむね平和に1日が終わった。理由は幾つか考えられた。11月中旬、香港理工大学での抗議者による籠城で、多くの若者が逮捕され、前線に出る要員が大幅に不足したこと。この日のデモを主催した民陣と警察の交渉がギリギリのところで折り合いが付いたこと。

11月24日の区議会選挙での民主派圧勝を受け、警察側が市民の声をある程度尊重した可能性もある。11月19日に香港警察トップがより強硬と言われる人に交代したことで、抗議者側が警察の出方を慎重に見極めた、という見方もできた。

撮影=筆者
抗議者と見物人

民主主義のために闘った半年間

週が明け、10人を超える若い抗議者にインタビューを行った。彼らの抗議活動への意欲は一様にトーンダウンしていた。第一に、皆疲れ切っていた。現場に出る回数は減り「今後の人生についても考え始めている」と口にする者が増えた。学業、仕事、余暇を犠牲にして、逮捕や負傷、命の危険も顧みず闘った半年だった。

香港にこれまで存在した「自由」と「法の支配」が脅かされるのであれば、「民主主義」を手に入れるしかない。「逃亡犯条例改正案」の撤回にとどまらない「5大訴求」を掲げ未来の香港人のために闘ってきた。

撮影=筆者
青い塗料の入った液体を放水する

家族、友人、恋人、さまざまな人間関係にも変化が生じた。「親中派の親と激しくけんかし、家を出た」と嘆く若者もいれば、「あまり仲が良くなかったいとこと、安全確認のため頻繁に連絡を取り合い絆が増した」と語る若者もいた。

最前線の勇武派で20代後半の男性に話を聞くことができた。カフェなどの公の場ではなく、警察が立ち寄る可能性の低い密室で、全身を隠すいでたちで向かい合った。会うことができたのは、知人の仲介でインタビューを申し出てから4日後のこと。こちらが普段どのような媒体で仕事をしているのか、といったことも事前に細かくチェックされた。