デモはこれからどこへ向かうのか

このままデモは収束するのだろうか? 彼らに問い掛けても、皆「分からない」と口にした。

「これまでと同じ闘い方では状況は変わらない。運動のコンテンツは正直に言うと飽和状態です。次なる方法をおのおのが模索しSNSで議論し道筋を付けていく。そのやり方は続けていく」

目に見えて弱体化した勇武派が目指す先はどこか?

われわれはまた日本の過去の記憶から連想してしまう。一部の先鋭化した若者がテロリズムに走るのでは?

インタビューに応じた抗議者たちは、最前線だけが闘いではなく、役割は状況に応じて変化する、という。ある者はポスターを作り、別な者はインターネットに記事を書く。密室で向き合った勇武派男性の言葉が印象に残っている。

「周庭(アグネス・チョウ)さんの発言が最近おかしくなっている」

とっさに仲間割れを疑ったが趣旨はこうだ。

「彼女は外国への発信力が強い。世界の民主主義国では、勇武派の暴力への懸念が増しています。なのに、彼女は勇武派を擁護する発言をしてしまう。それでは世界中の市民の共感を得られない。われわれの活動を否定した方がいい」

各自が努力し、仲間割れをしない、という標語の真髄に触れたような気がした。

撮影=筆者
抗議者と警察の闘いをレストランから眺める市民

「デモの原因は林鄭月娥の失策」が香港人の共通認識

ところで、親中派も含めた香港人のほぼ全ての意見が一致する見解が1つだけある。「逃亡犯条例改正案」問題に端を発し長期化した香港デモは、ひとえに林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官の相次ぐ失策が原因である、という点だ。

そもそも改正案に危機感を示したのは親中派富裕層だった。区議会選挙で民主派が圧勝したことで、親中派の行政長官への怒りは頂点に達したようだ。

「なぜ、こじれる前に手を打たなかったのか? なぜ、香港人の感情を逆なでばかりするのか?」党派を超えて、香港人は皆あきれ果てているようだ。

年が明けると、1月中旬には香港政府常設の警察監視機関(IPCC)による調査結果の中間報告が行われる予定だ。警察の市民への暴力に対し、香港人が納得できる説明が行われる、とは考えにくい。5大訴求の1つ、独立調査委員会の設置を求める市民感情が再燃する可能性は否定できない。

9月の立法会選挙に向けて、香港政府、民主派市民の攻防が続く1年になるだろう。

引き続き現地に赴き、情勢の変化を見守っていきたい。

撮影=筆者
PRESSの8割は香港メディアだ
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