近い将来、育児と介護の「ダブルケア」がやってくる

ここで、一つの予測が成り立つ。近い将来、働きながら子どもを産み、育児と介護を同時にしなくてはいけない層、すなわちダブルケアワーカーが近い将来多く出現するだろうという予測である。

一般に、介護が必要になるのは70歳代からである。2016年に実施された国民生活基礎調査によると70歳台で要介護者になる確率が60代の5倍となり(65~69歳の要介護者総数4.4%が70~79歳になると22.2%)、80歳台では48.9%を占める。親が70歳を超えると介護がいつ始まってもおかしくない。介護を共同で行う兄弟がいることもなく、少子高齢化のわが国ではますます介護の重圧が若い世代にのしかかる。

このようなケースを考えると分かりやすい。

四年制大学を出て、企業の営業職として働き、婚活を経て32歳で同じ年のB子さんと結婚したA男さん。子どもを望んでいたが仕事が忙しく自然に任せていたら36歳になっていた。夫婦で不妊外来に行ったところ治療を勧められ、ようやく子どもを授かったのが38歳。B子さんは産休と育休を取り保育園もなんとか確保し40歳で会社に復帰し、2人で交代で育児をしていた。
そんな中、田舎に単身で住むA男さんの母親が自宅で倒れ要介護になった。一人っ子のA男さんは週末母親の元に通う。仕事はやりたかったプロジェクトのメンバーになっているので、介護に通う時間を捻出するのが難しいが何とかやりくりする。B子さんは仕事と育児で手いっぱいである。A男さんは毎日疲れている。

女性活躍が進むほど介護離職のリスクも高まる

家制度が強かった時代は嫁が婚家の義両親の介護を一手に引き受けていた。女性は専業主婦が大多数であったし、マネジメントポジションにある女性は極端に少なく、女性の就労は代替可能な腰掛けとして扱われた。男性は家の外で働き、女性は育児、介護を含めて家内全般を取り仕切るのが一般的だった。

今日では、「会社を辞められては困る」ポジションに男女問わず就き、介護は実子が主として行うことが当たり前になっている。人口減少の中で、一人が担う仕事の重さは平成の頃と比較してはるかに重い。女性活躍推進が進むとこの傾向はますます進むだろう。

ダブルケアワーカーは女性に限った話ではない。当然ながら、男性も親の介護で仕事をスローダウンしなくてはならない事態は増加するだろうし、事実、近年の男性の介護離職率は大幅に増加している。

今後、晩婚化、そして少子化が進む中で、育児と介護のダブルケアをしながら、仕事量を調整して働き続けなくてはいけない層は大量に出現するのである。ただでさえ人手不足の中で、仕事をスローダウンする人が多く出現することは企業にとっては頭の痛い状態である。ダブルケアで働く人が優秀であればあるほど、企業としては、離職を避けたい。

しかし日本企業の昇進管理は多くの場合、最初から最後まで基本的に同じ労力で働き続けることを前提にして成り立っており、これらの人々を評価するすべを持たない場合が多い。