“おじさんコミュニティー”は約5年後に完全崩壊する

一方で本人が希望したか否かは別として、管理職になる女性の数は増え続けている。課長級の女性の割合は平成元年の2.0%から平成の終わりには11.2%になった。5倍になったということもできるし、女性活躍と大騒ぎしている割に1割強しかいないという言い方もできる。いずれにせよ、女性が生涯働き続け、その結果昇進し、マネジメントを担うという流れはもはや珍しいものではない。

社会が女性の管理職就任を真剣に後押しし始めたのは、合計特殊出生率が過去最低の1.26まで落ち込んだ2005年近辺からである。直截ちょくせつに言えば、人手不足を埋めるべく始まったのが、近年の女性活躍推進の流れである。

それは、“おじさんコミュニティー”であるビジネスワールドにおいて、長い時間「蚊帳の外」ポジションだった女性を「活躍させる」ことで、人材を埋め合わせようという苦し紛れの第一手だった。一方で、人口減少はますます進み、2019年の出生人数は90万人を割り込み史上最低を更新している。人口減少はわが国の「人ありき」の社会システムが立ちゆかなくなることと同義である。今後のわが国において、人々は男女の差なく働き続けることが求められるのは自明である。

女性管理職は今後ますます増加していくことは間違いない。わが国の女性活躍が本格的に始動し、企業が総合職女性の採用を増加し始めた2013年近辺に入社をして、男性と同じようにキャリアを積んできた女性たちが企業の中心になり始める2025年ごろには、今まで社会の中心であったおじさんコミュニティーは完全に形が変わるだろう。少なくともおじさんだけが中心のコミュニティーは崩壊する。もちろん、見た目を変えて何らかの形で生き残るであろうが。

キャリアの転換期と妊娠・出産の時期が重なる

一般にキャリアステージの中でがむしゃらに仕事をする傾向が強いのは30代からである。キャリアを積む中で仕事が面白くなり、組織内でも裁量の範囲も広がる。そして、この時期は男女問わずライフステージでは結婚というイベントが多く行われる時期であり、女性にとってはこれに出産が加わる。女性の通常妊娠の限界が41~42歳とされている中で一気にさまざまなややこしい出来事が噴出する。

マネジメントポジションへの進出が始まる時期の女性たちの間で、「仕事が面白くなってきたので、今結婚や出産でキャリアの穴を開けたくない」「ようやくやりたい仕事ができるようになったので逃したくない」「人手不足の状態で、出産で休めない」などという話は、日本中至る所で聞こえる。

女性の多い職場では、妊娠順番ルールが非公式に定められているところさえあって、マタニティーハラスメントの一種として問題となる。言い古されている事柄だが、女性は、キャリア上の転換点と「子どもを持つ」という人生上の一大イベントの時期が一致しているのが現状であり、女性たちが妊娠を後回しにするという選択をすることも多い。その結果、働く女性の晩婚化、出産年齢の高齢化をますます引き上げ、少子化がどんどん進んでいく。