褒めることは、価値観を伝えること
親が褒めるということに関して言えば、それは道徳を伝えることにもつながります。つまり、親の価値観です。褒めるということは、親が「望ましい」と思っていることを、子どもに示す行為なのです。
例えば、今まで汚かった部屋が最近ちょっとキレイになってきた場合、「最近部屋がキレイだね」と伝えることは、親にとって、あるいは社会にとって「整理整頓しておくことはプラスである」という価値観を伝えることになります。逆に今までキレイだった部屋が最近汚くなってきた場合、この変化を褒める親はいないはずです。
ですから、褒めるということは、価値観を伝えることでもあるのです。親が子どもを褒めるときには特に、この部分を意識しておかなければなりません。
成績ばかりを褒める家と、周囲の人のためにしたことを褒める家では、その子の価値観は自ずと変わっていきます。前者の家の子どもは「いい点を取る」という行動が強化されるのに対して、後者の家の子どもは「人に優しくする」という行動が強化されていきます。親の価値観は、このように子どもに根づいていきます。昔から、「子は親の鏡」と言われるゆえんです。
垂直比較で褒められるのは親だけ
子どもに名前をつけるとき、みなさんも「こんなふうに育ってほしい」という願いを込めたはずです。しかし、それ以来忘れているなんてことはないでしょうか。じつはその願いは、日々の「褒める」という行動の中で、実践することができるのです。
「なかなか褒めるところが見つからない」という話もよく聞きますが、それは親の観察力が足りないからです。今の瞬間だけ見ているから、見つからないのです。
先ほどお話ししたように、褒めるためには、子どもの過去の状態を思い出さなければなりません。それはやはり面倒なもの。目の前の状態だけを扱ったほうが、ラクに決まっています。
しかし、考えてみれば、核家族化した社会で垂直に比較して褒めることができるのは、子どもの成長をずっと見ている親しかいません。垂直比較で褒めることができるのは、親の特権。「前はできなかったのに、こんなにできるようになった」と褒めることができるのは、親だけなのです。