けちらずに暖房器具を使うことで、ぐっすり眠れる
「冬のある日、石川県の同じ町でも、温かい家と寒い家があります。私たちが調査した約280世帯のうち、75%が寝室の室温が13度を下回っていました。国土交通省が2017年に発表した全国調査でも、約55%の家の寝室が13度未満。睡眠時に寒すぎる家が多いんです」(伊香賀教授)
寝室の室温の低さは寝つきを悪くし、熟睡時間を短くして、翌日の作業効率を低下させる。また、就寝前の23時時点の居間の室温が18度以上に住む人と比べて、12度以上18度未満の住宅では頻尿リスクが1.2倍、12度未満では5.3倍もリスクが高まるという。
窓を見直しても寝室が寒い家は、光熱費をけちらず暖房器具を使用したい。その場合、窓側に暖房器具を設置すると、窓からの冷気を押しとどめ、暖房効率を上げることができる。
「乾燥を感じる」と中途覚醒する確率が2.9倍に悪化
暖房を使用するにあたって問題になるのが空気の「乾燥」だ。伊香賀教授らの研究で、寝室の乾燥を感じる群は感じない群と比べて中途覚醒する確率が2.9倍、いびきをかく確率が1.6倍高まり、睡眠の質も2.5倍悪くなることがわかっている。エアコン暖房に加湿器を併用して、冬場の湿度を40~60%に保ちたい。
加湿器にはいくつかのタイプがあるが、エアコンとの併用の場合は運転コストが安価な気化式加湿器がいいだろう。ただし、カビが生えやすいので、こまめな清掃が必要だ。ちなみにスチーム式の加湿器は、メンテナンスが減る分、電気代が気化式と比べて約3倍になる。
また、室内の仕上げが人工材料か自然素材かが、自律神経や睡眠時間、翌日の作業成績に影響するという報告もある(伊香賀研究室より)。