元凶は「放映権料をより多く得ようとする考え」にある

そんな朝日社説も「なぜもっと早くに方針を転換し、調整に取り組んでこなかったのか」との疑問を投げかけ、最後には「今回の出来事を踏まえて、IOCには改めて注文したい」とIOC側に求める。

「夏季五輪の時期を7、8月とする現在のやり方は限界にきている。欧米の人気スポーツが手薄なときに開催し、テレビ局からの放映権料をより多く得ようとする考えを続ける限り、同様の問題が必ず起きる。東京大会の苦難と混迷を教訓に、持続可能な五輪像を探るべきだ」

産経も朝日新聞と同じ正論を並べているが…

ふだん朝日新聞と正反対の論を展開しているのが産経新聞である。そう期待して10月18日付の社説(主張)をのぞくと、「五輪マラソン 札幌変更もやむをえまい」という見出しである。朝日社説と同じトーンだ。

「寝耳に水の開催都市、東京では小池百合子都知事が『唐突な形で発表され、このような進め方は大きな課題を残す』と動揺を隠さなかったが、IOC幹部らの発言を聞く限り事実上の決定である」
「組織委も受け入れる意向だ。選手の健康問題が前面に打ち出されては強硬な反対もできまい」
「それほどに、昨今の東京の夏は暑い。札幌の夏も暑いが、平均気温も湿度も東京より低めだ。夏のマラソンの開催実績もある」

どれも正論ではある。しかし正論を述べるだけでは、産経新聞の読者としてはおもしろくない。読者は産経社説らしい主張を期待しているのである。

しかしそこは産経社説。釘を刺すことを忘れない。

「ただし、開催都市東京や組織委に諮ることなく、重大な変更案を突然発表したIOCの独善ぶりには不快感が残る。もっとていねいな運営を心がけてほしい」

「IOCの独善」とはよく書いてくれた。IOCは日本側の意向をどう考えているのだろうか。

続けて産経社説は書く。