米テレビ局からの巨額の放映権料が「夏季開催」の背景
夏季がアメフト、バスケットなど人気のある米プロスポーツのオフ期に当たり、この期間だと、IOCが米テレビ局から五輪中継に伴う巨額な放映権料を得やすいからである。オリンピックはこの放映権料に支えられている。米テレビ局が夏の五輪開催を求めれば、IOCはそれに従わざるを得ないのだ。しかも五輪には関係者に「裏金」が流れる構造があるという指摘もある。
今回の札幌への変更についてIOCは「アスリートファースト」を強調するが、実態はそんな生やさしいものではない。その裏では巨額のオリンピックマネーが動いているのだ。
今年1月、プレジデント・オンラインに「JOC竹田会長“贈賄疑惑”は仏の報復なのか」との記事を書いた。東京五輪の招致活動をめぐり、招致委員会の理事長だった竹田恒和・日本オリンピック委員会(JOC)前会長が、仏検察から贈賄関与の疑いで事情聴取など捜査を受けているとの内容だった。
仏検察は、竹田氏が理事長を務めていた東京五輪招致委員会が2013年にシンガポールのコンサルタント会社に2億3000万円を支払い、その一部が東京でのオリンピック開催を決める票の買収に使われたとみている。
竹田氏はコンサルタント会社と契約し、2億3000万円を送金したことは認めてはいる。しかし「契約は一般的なものだ」とその正当性を強調している。ただし、竹田氏が開いた記者会見はわずか7分間で、不正を全面否定する文書を読み上げると、すぐに会場から姿を消してしまった。疑惑に応える姿勢があるとは言いがたい。
「優先すべきは選手の健康であり、観客の安全」は正論だが…
札幌変更の件は、新聞各紙も社説に取り上げている。
朝日新聞の社説(10月18日付)は「マラソン札幌案 選手の健康優先で臨め」との見出しを掲げ、冒頭からこう指摘する。
「準備を進めてきた関係者には反発や戸惑いがあるだろう。だが優先すべきは選手の健康であり、観客の安全だ」
もちろん反発や戸惑いはある。しかし朝日社説は「走る選手と沿道の観客」を「優先すべきだ」と指摘する。その通りなのだが、あまりにも正論すぎないか。
そのうえ「東京都と組織委員会は提案を受け入れ、札幌市も交えて準備を急いでもらいたい」と主張する。これを読んで小池都知事も苦い顔をしているのに違いない。