“ふるさと納税”の本来の意義
ふるさと納税には、国という行政システムに頼らず人々の自由な意思にもとづいて、地方自治体に財源を再分配するという機能がある。それは、自治体、各地の企業、納税者の3者にとって利得(メリット)があるはずだ。
ふるさと納税では、納税者が自分の応援したい自治体に寄付を行う。自分が生まれた地域でもよいし、自然災害に見舞われた地域、あるいは魅力的な物品が生産されている地域など、どの自治体にふるさと納税を行うかは個人の判断次第だ。
各自治体がふるさと納税を通して財源を確保するには、その地域の魅力を高め、磨き、発信しなければならない。ふるさと納税には、各自治体がみずから新しい発想を取り入れ、創意工夫の発揮を目指す呼び水となる可能性がある。
その地域に魅力を感じ「応援したい」と思う人は寄付を行う。この納税者は、住民税などの控除を受けることができる。それに加え、特産品などを“返礼品”として受け取ることもできる。これは、納税者にとって大きなメリットだ。
同時に、自治体はふるさと納税を通して財源を確保できる。地方の企業も、返礼品の提供を通して自社の強みをアピールすることなどができる。それは、わが国の地方経済の活性化にとって重要だ。
返礼品競争が激化
ふるさと納税は、人々の自由な考えを活かして納税者の満足感と地方の活力向上の両立を目指そうとする制度だ。その発想は、これまでの地方財政制度とは大きく異なる。
わが国では、地方交付税によって自治体間の財源の不均衡を解消することを目指してきた。この制度では、政府が集めた税金を、官僚組織が合理的と判断した基準にもとづいて、各自治体に再分配する。いくらの交付税を、どこに配るかは財務官僚の考えが影響する。
一方、ふるさと納税では、一人ひとりの納税者(国民)から、直接、自治体に資金が回る。中央政府の所得再分配機能を経由することなく、個人の意思にもとづいて地方にダイレクトに財源が移るのが特徴だ。
問題は、自治体が他よりも多くの寄付を集めようとして、過度な返礼品を提供するようになってしまったことだ。ふるさと納税制度は、地方貢献・応援という理念にもとづくアイデアの創出促進よりも、返礼品競争が激化してしまっていると指摘する経済の専門家もいる。一部では、地元の企業が取り扱っているからという理由で、他の都道府県の特産品やギフト券、家電などを返礼品として提供するケースもある。これは行き過ぎだろう。
同時に、地方の応援よりも、返礼品を目当てにふるさと納税を行う人も増えている。この結果、一部の自治体では住民税収の落ち込みが軽視できない問題になってしまった。