消費税の引き上げが来月に迫った。政府は「国債返済のために増税が必要だ」と説明している。しかし、元大蔵省の髙橋洋一氏は、「政府のBS(バランスシート)を読み解くと、実は増税の必要はないことがわかる」という――。

※本稿は、髙橋洋一『武器になる数学アタマのつくり方』(マガジンハウス)の一部を再編集したものです。

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「国の借金1000兆円」を冷静に読み解いてみると

「日本はいま1000兆円の借金を背負っている。国民一人当たりに直すと800万円になる。みなさん、こんな借金を自分の子や孫に背負わせていいのか。借金を返すためには税が必要だ」といった話は誰もが一度は耳にしたことがあるだろう。財務省(かつての大蔵省)が1980年代から繰り返し言い続けてきていることである。

1000兆円の借金とは何を指して言っているのだろうか。

その正体と、実はここには大きなウソがあるということも、政府のバランスシートを見ればすぐにわかる。経営者が企業を運営するように、政府は国を運営する。当然、政府にもBSとPLがある。

政府の財務書類は財務省のウェブサイトで簡単に入手できる。まず、このことを知らない人が多すぎる。

政府のBSを最初につくったのは私である。単に実際の政策運営上、必要だったからで、1994年、大蔵省にいた時のことだ。その時には大蔵省内部で、「そんなものは出すな!」という話になり公表は見送られた。2004年頃、小泉純一郎総理(当時)に、「政府のバランスシートはこのようになります」と私が話すと、「すぐに出せ!」ということになって今に至っている。つまり、政府のBSは2005年からずっと公開されている。インターネットで閲覧できるようになっている。

政府のBSを読むうえでまず知っておく必要があるのは、「企業は負債よりも資産のほうが多いほど安泰だが、政府のBSの場合は資産よりも負債のほうがちょっと大きいくらいでも健全だ」ということである。

つまり政府には「利益剰余金」は存在しない。政府のBSの「純資産」は多くの場合マイナスである。これは世界のどの国も同じことだ。

それでもよほど大きなマイナスでなければ破綻しない。これは歴史の事実だ。