際立った数字だけを拾い、細かい数字は読まなくていい
2019年(平成31年)1月29日に財務省のウェブサイトで公開された平成29年度の国の財務書類(一般会計・特別会計)から、政府のBSを見てみよう(図表1)。
BSには細かい数字が並んでいるが、際立った数字だけを読んでいき、その意味がわかればよい。
財務書類を読みこなすには、数字を正しい単位で声に出して読むのがコツである。
BSやPLに書かれている数字は億単位、兆単位であり、キリのいい位以下が切り捨てられて書かれていない。
(単位:百万円)とあれば、数字の最後の位が「○百万円」となる。「123、456」とあれば「1234億5600万円」のことである。「この項目の数字が大きいな」というだけではだめで、「この項目の数字が大きい、約1235億もある」と言えて初めて数字が読めたことになる。これに慣れるには、数字を正しい単位で声に出して言うのがいちばんだ。
平成29年度の政府のBSにおいて、負債の部で際立った数字は「公債」である。966兆8986億2800万円。これが悪名高い「借金1000兆円」の正体だ。
ひとつ上に「政府短期証券76兆9877億9300万円」がある。これと合わせることで堂々と「借金1000兆円」と騒いでいるのである。借金ということで言えば、さらに「借入金31兆4434億4900万円」を足したものが日本政府の借金である。
重要なのは「資産」と「負債」のバランス
「借金の額だけを見て批判するのは的はずれである」ということはすでに述べた。重要なのは負債総額ではなく、“資産と負債のバランス”である。
先の日本政府のBSから、資産合計を見てみよう。670兆5135億2200万円だ。負債合計は、1238兆8753億1100万円である。資産合計から負債合計を引いた資産・負債差額を出せばバランスがわかるが、この数字は計算するまでもなくBSに書いてある。568兆3617億8800万円である。
資産・負債差額がすでに書いてあるのだから、それだけ見ればいいではないかと思われるかもしれない。しかし、大きく際立った数字の勘定項目を確認するクセはつけておいたほうがいい。そうしたからこそ、「政府の負債のほとんどは公債だ」ということもわかったのだ。
「借金1000兆円」と騒ぐ人たちは、「資産・負債差額568兆3617億8800万円」が見えていない。何度も言うように負債の額が問題なのではない。「日本政府の純資産は約マイナス568兆円」が正しい言い方なのである。