むしろ「中流の国」日本が旅行しやすい

日本では最高級車であるレクサスも、彼らにとっては次善でしかない。彼らにとって高級車の代名詞はポルシェでありフェラーリでありマセラティなのです。逆にいえば、「中流の国」日本にとって、中国の景気減退は追い風になっている。

これは海外旅行に関してもいえるはずです。これまで夏休みになればヨーロッパの高級リゾート地でバカンスをすごしていた富裕層が、これからは「近場の」日本へ家族連れでやってくる可能性がある。中国の景気減速は、日本のインバウンドビジネスにとって大きなチャンスと考えたほうがいいのです。

日本に1000万人が来たといっても、14億人の人口と比べたら、わずか0.7パーセントにすぎません。逆に、まだまだ伸びる余地があると考えるほうが自然です。

もちろん、パスポートをもっている中国人は1.2億人しかいません。海外旅行を楽しんでいるのは、経済的に恵まれた上位8.5パーセントの人だけなのです。とはいえ、その8.5パーセントの10分の1すら、まだ日本に来ていないわけです。

そう考えると、景気減速だから訪日中国人が減るという展開は、ちょっと想定しづらいことだと思います。

日本の総人口より多い中国の“中流階級”

中国は日本人には想像もつかないほどの格差社会で、資産が1兆円を超える超富裕層までいます。でも、彼らは数が少ないうえに、欧米志向が強い(だから、「レクサスでいいか」という発想になるわけです)。

一方、ミドルクラスの人たちは数が多い。多いと聞いて、日本の感覚で考えてはいけません。彼らの数は、日本の総人口より多いのです。何をもってミドルクラスと考えるかは諸説ありますが、最近よく目にするのは3.5億人という数字です。

彼らは消費能力が高く、日本製品の大ファンでもある。日本を個人旅行するのも、この層です。超富裕層は欧米のブランド一辺倒ですが、ミドルクラスは「中流の国」日本の商品に反応する。

私がプチ富裕層という言葉でイメージしているのは、その3.5億人のうち、上位1億人ぐらいの人たちです。14億人の全員を相手にするのではなく、1億人だけに絞りこんでマーケティングしていく。

経済学者は彼らのことを「中間層」と呼びますが、本人たちとしては違和感がある。中間層が圧倒的にぶあつい日本と違い、彼らは上位10パーセントに入るほど豊かな暮らしをしている人たちだからです。