子供が理不尽な目に遭わないために親ができること

世の中はまだまだ理不尽な差別に溢れています。先ほどの例のように家庭の中にも夫婦の権力関係がありますし、貧富の差もあるでしょうし、外国籍の子もいます。

子供たちにも親にも、将来を考えるうえで心がけてほしいことがあります。それは周りをよく見るということです。いろいろな人たちと付き合うことで、世の中にどういう人がいて、どういう人生があるか身をもって理解する。こうした異文化と接する機会として、公立小学校は非常に良い学びの場になるはずです。

また、自分たちが受けた理不尽な経験や思いを子に話してやってください。みなさんは自分が受けた差別や社会の理不尽さを子供に味わわせたくないからこそ、教育に力を注いでいるはずです。もし、理不尽な社会の中で自分だけが勝ち抜いて、他人を出し抜くことを教えたら、そもそもの理不尽な社会自体を変えようとは思わなくなるでしょう。

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実際に女性の中にも「自分は差別を受けたことがない、実力があれば差別なんて関係ない」と豪語するエリートもいます。これでは、社会全体がいつまでたっても良くなりません。ですから私は祝辞でも「みなさんの頑張りを自分が勝ち抜くためだけに使わないでください」と伝えたのです。あなたたち親世代が受けた差別を変えるために、次の世代の力を生かしてほしいのです。

私も今年で71歳になりました。これまでは上の世代に「こんな社会に誰がした?」と詰め寄ってきましたが、いよいよ下の世代から「あなたたちは一体何をしてきたの?」と詰め寄られたら言い訳できない年齢になりました。今の社会を振り返ってみると、お世辞にも胸を張れる社会を下の世代には引き継げなかったけれど、次の世代にどんな社会を手渡すかは、親世代であるあなた方にかかっています。

※編集部註:初出時、「東大の入試日には『親の控室』が用意される」との見出しがありましたが、東京大学が用意している控室は、保護者の付き添いを許可された一部の受験生向けのため、表現を改めました。(10月3日13時10分追記)

(構成=富谷瑠美 撮影=干川 修)
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