これまで企業と大学には「すれ違い」があった

――通年採用になると、ますます学生は早期の内定を目指して就活がエスカレートすることになりませんか。

通年採用といっても、大学の1年生から4年生のあいだにいつでも採用していいということではありません。あくまでも卒業してからいつでも、という採用が前提です。

――産学協議会では、経団連と大学で何を話し合っているのですか。

産学で大学教育や今後の採用のあり方について考えていく場ができたのは、歴史的には初めてのようです。大学側と企業側がお互いに疑心暗鬼という状態が続いていました。今回、初めて腹を割った議論がスタートしたのです。

これまで企業は、あまり大学に期待してこなかった。だから、まっさらな状態で卒業して入社してくれば、あとは企業で教育する、というのが標準的なスタイルでした。

大学にしても、どんな人材を企業が求めているのか掴みようがなかった。どういう人材が欲しいか言ってくれたら、そういう人材をつくってやるよ、と大学の先生たちは言ってた。そう言われても、企業としては「ほんとですかね」くらいにしか受け取らなかった。

撮影=プレジデントオンライン編集部
日立製作所グローバル人財開発部長の迫田雷蔵氏

文系大学に進学したら「数学とは無縁」ではダメ

すれ違いがあったわけで、それを初めて同じ場所に立って話し合えることになったわけです。今年の1月にスタートして、4月22日に「中間とりまとめと共同提言」を出しましたけど、まだ方向性で合意ができた段階で、具体的にはこれからです。

大きな方向性は、大学でしっかり学んでほしいということです。ただ4年間過ごしたから卒業させるのではなくて、きちんと学んだ質の保障を大学に求めています。「Society 5.0」時代になっていくなかで、数理的な推論の力であるとか、データ分析力、ITリテラシーがなければ、社会に出てから戦っていけません。

これまでのように文系大学への進学を決めたら、数理的なところと無縁になる。これでは、ダメなんです。人文科学・社会科学・自然科学の基礎分野を横断的に学ぶリベラルアーツの力を大学で身につけるよう求めています。