就活ルールの形骸化を自ら認めることになった
大学生の就職内定が早まっている。リクルートキャリアによると、今年5月1日時点での就職内定率は51.4%。直近の7月1日時点での就職内定率は85.1%で、いずれも2012年の調査開始以来、最も高い。
経団連は「採用選考に関する指針」(いわゆる就活ルール)で、面接・内定の解禁は6月1日としてきた。ところが半数以上の大学生は、解禁日前の5月時点で、いずれかの企業から内定を得ているのだ。
就活ルールは早期化を防ぐためのものだったが、多くの企業はそれを守ってはいない。結局、経団連も昨年10月、2021年春入社(現在の大学2年生)から就活ルールを廃止すると発表した。ルールの形骸化を自ら認めることになり、そのことで早期化がさらに進んでいる。
経団連はこうした状況について、どう考えているのか。形骸化しているとはいえ、なぜ就活ルールを廃止してしまったのか。経団連は今年1月、大学教育と採用活動のあり方を大学側と協議するため「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」をはじめて発足させた。3つある分科会のうち、「今後の採用とインターンシップのあり方に関する分科会」の分科会長を務めている迫田雷蔵氏(日立製作所人財統括本部グローバル人財開発部長)に訊いた。
真夏の就職活動に疲労困憊する学生を目の当たりにした
――就活ルールは1953年の「就職協定」として始まりました。ところがルール破りをする企業が相次ぎ、97年に「倫理憲章」へ変わりました。このとき決められたのが「内定日は大学4年生の10月1日以降」です。その後、広報や選考の日程に規定ができ、2013年には「採用選考に関する指針」もできました。広報活動の解禁日は大学3年生の3月1日、選考活動は大学4年生の8月1日というものです。いずれも目的は「早期化を防ぐこと」だったはずですが、なぜ就活ルールを廃止してしまったのですか。
採用選考に関する指針の見直しをしたのは、大学や政府からの要請を受けてのことだったと思います。「採用の早期化や就活の長期化は問題なので、経団連として対応してほしい」ということで、就活ルールを見直して、経団連の指針としたのです。ところが、リクルートスーツに身を包んでの真夏の長い就職活動に疲労困憊する学生の姿を目の当たりにして、現在の広報活動開始3月1日、選考活動開始6月1日に変更しました。
――そうして変更してきた就活ルールを、結局、廃止したのは、ルールを守っている経団連会員の大企業が採用活動で出遅れてしまうことに危機感を感じたからではないのですか。