「使って便利」で「楽しい」決済アプリ
私のゼミでは、スマホ決済アプリの利用に関して、1194名の大学生に対面方式でアンケート調査を実施。アプリをダウンロードして利用する基準として、上位に挙がったのは、「セキュリティ」や「信頼性」といった当然とも言える項目に加えて、「使って便利」「使って楽しい」という項目でした。
この結果をもとに、どうすればより多くの人にアプリを使ってもらえるかについて、私のゼミ生たちがLINE Payとpring(プリン)にプレゼンテーションを行いました。前者はLINEの決済サービス、後者はフィンテックを中心とするIT企業メタップスが運営する、スマホ決済サービスの専門企業です。pringは、シンプルで使いやすく加盟店の手数料も安いですが、多くのアプリの中から選ばれるほどの特徴に欠けるとみています。
「使って便利」に関しては、次のような内容を提案しました。①自分が使いやすいように機能やデザインをカスタマイズできる機能(アプリに愛着が湧き、他社アプリに移ることを防ぐ効果がある)。②個人間送金に関して、ニックネームでの登録を認めていることから誤送金の恐れがあるため、送金時に簡単なプロフィールを表示する機能(この機能はpringですぐに採用された)。③利用者が18歳以下でも安心して利用できるように、親が利用できたり、金額を制限できる機能。④上司・部下など立場の違いや、飲酒の有無などで割り勘率を変えることができる機能。⑤利用できる店舗が限られていることから、現在地付近の店舗でアプリが利用できるかどうかを知らせる機能。⑥法人格のないサークルやPTAなどの団体が利用できる仕組み(幹事の立て替えや未払い者の確認などの手間を省ける)。⑦使いすぎ防止のため、金額の上限を設け、使用額が上限に達したら警告もしくは利用停止をする機能。⑧仕送りなど、決められた日時に自動送金する機能。
また「使って楽しい」に関しては、支払いや送金時にゲーミフィケーションを取り入れることを提案しました。ゲーミフィケーションとは、ゲームが持っている楽しさなどのユーザーが引き込まれる要素を、ゲーム以外の分野に応用することです。例えばLINE Payであれば、LINEのキャラクターである「ブラウン」「コニー」などを使って、支払いや送金などの利用頻度に応じてレベルアップするなどの遊びを取り入れることを提案しました。
これらの提案に対し、LINE Payの長福久弘COOは、「すでに社内で検討した案もいくつかあるが、我々は2番手、3番手で十分。市場が成熟し、それを求める人が多くなるのを待つ」という反応で、スマホ決済アプリ市場を開拓するという気概は感じられませんでした。