スマホ決済アプリはどれが生き残るか?

2018年、PayPay(ペイペイ)が大々的に行った「100億円キャンペーン」を契機に、日本でもQRコードを用いたスマホ決済アプリが広く知られるようになりました。18年から19年にかけて、「◯◯ペイ」という名称の同様のスマホ決済サービスが雨後のたけのこのように次々に登場しています。

Imaginechina/時事通信フォト=写真
キャッシュレス化が進む中国で支持を集めるアリペイ。

スマホ決済アプリが広く普及しているのが中国です。小規模店舗はもちろん、屋台や物乞いにまで利用されています。中国のキャッシュレス比率は60%を超えており、都市部ではスマホ決済アプリを使わないと、日常生活が著しく不便になるほどです。中国でスマホ決済のサービスが普及した背景には、事業者の努力もありますが、偽札が多い、紙幣が汚い、ATMが近くにない、そもそも銀行口座を持っていない人がいる、などの事情があります。

日本の場合、これらの事情は当てはまりません。むしろ正反対です。日本では現金を使うことが便利なため、キャッシュレス比率は18%程度にとどまります。しかし、野村総合研究所の木内登英氏は、新札発行や流通、ATM維持管理、小売店のレジ作業などで、日本の現金利用コストは年15兆円を超えると述べています。現金を利用する便利さの裏で、膨大な社会的コストが発生しているのです。スマホ決済アプリの普及には、こうした社会的コストを削減できる可能性があります。

スマホ決済アプリの利用を促すには、利用者が少なくとも現金と同じ程度に便利と感じる必要があります。そのためには、ほとんどの店舗で使えるようにすることが不可欠です。そこで、事業者は次の3つに取り組むべきです。

第1に、利用者がどのアプリでも使えるように、事業者が獲得してきた加盟店を相互開放すること。第2に、店舗が多数あるアプリのどれにでも1つのQRコードで対応できるように、QRコードを標準化すること。そして第3に、店舗が支払う決済手数料をゼロに近づけること。店舗がスマホ決済サービスを導入する際の鍵となるのが決済手数料です。小規模店舗において、売り上げの3%を取られるのは死活問題です。手数料がかかる限り、導入しない店舗はなくならないでしょう。しかし、手数料がゼロであれば、導入しても差し当たり損はないと考えます。コストがゼロであれば、人は価値判断をしなくなるからです。

グーグルなどのグローバルIT企業が成功した背景には、「まず広く普及させることを考える。マネタイズはその後でいい」という基本的な考え方があります。スマホ決済サービスを提供する日本企業も、この姿勢に学ぶべきでしょう。