「嫌われる勇気」以上に「甘える勇気」が大事
これは道徳論ではなく、ひとりの能力では限界があるから、助け合える点は助け合って成果を高めようというアメリカ流のプラグマティズムに基づくものだ。
人に頼ることや救いを求めることが、日本社会ではとてもハードルの高いものになりつつあるが、そこで勇気を振り絞って、人に頼り救いを求めることで展望が開けることもあるはずだ。少なくともメンタルヘルスの改善を期待することができる。
今回の元次官の事件は、こうした「甘える勇気」の欠如がその根底にあると私は解釈している。それがないと、賢い人ほどメンタルにどんどん追い込まれ、うつ的症状になって本来の能力が発揮できなくなる。最終的には心理的視野狭窄を起こして、最悪の判断や行動をとってしまう。
「甘える勇気」があれば、メンタル面で健康度が上がって判断・決断も健全なものになる。また、人との協働によってパフォーマンスを向上させることができる。
今の日本人に、とりわけ頭のいい人がバカにならないために身に付けるべきなのは、「嫌われる勇気」以上に「甘える勇気」だと私は考えている。その理論や心の持ち方について詳しく論じた『甘える勇気』(新講社)という本を上梓したので参考にしていただけると幸いである。