「最近の自分、何か変だな」と思うことがあったら、信頼できる会社以外の友だちや家族に相談してみるといいでしょう。親しい人に話すことに抵抗がある場合は、街中にある心療内科のクリニックを一度受診してみるのもおすすめです。

思い切って休むと、人生の優先順位が変わる

今の時代、無理をしても、何も助けてくれる後ろ盾はありません。会社員として働く方の場合、仕事は会社にいる間だけにすることが、心身の健康を保つことにつながります。通院している患者さんの中にも、オンオフかかわらず仕事をし続けて体調を崩してしまっている方がよくいます。そういう方には、思い切って、生産性が落ちてきた時点で休職してもらいます。

川野泰周『会社では教えてもらえない 集中力がある人のストレス管理のキホン』(すばる舎)

休職に入るべきであることをお伝えすると、「会社からの評判が心配」「出世に響いてしまう」と心配される方も多くおられます。

けれども、生産性がだいぶ落ちてきている時点で、その人にとって限界なのです。それは言い方を変えれば、自分の人生を見つめ直すときがきた、ということ。

人生という長いタームからすれば、休むという選択肢はとても有用なものです。

限界まで働いて、いよいよ毎日出勤することもままならないような状態になってしまった人が、仕事を思い切って休んでみると、人生の価値観、優先順位が変わってくる、ということをよく経験されます。

倒れる前までは、仕事は堂々の1位にランクイン、2位から10位までも全部仕事で、11位ぐらいにようやく自分のプライベートが出てきたのが、仕事とプライベートと家族が、同列1位の状態にまでなったりします。人によっては逆転する人もいます。

人生の優先順位が変わってくると、「家族のことを犠牲にしてまで仕事してるなんて残念だな」と感じるようにもなります。そして、今まで「有休取るなんてとんでもない!」と思っていた人が、家族のために、「有休取ります」と堂々と言えるようになったりするのです。

体調を崩しがちになったら、精神的に限界にきていることに気づきましょう。「自分の生きがいや心身の健康を犠牲にしてまでやらなければいけないものって、あるのだろうか?」と、自分の心に聞いてみてください。

川野 泰周(かわの・たいしゅう)
臨済宗建長寺派林香寺住職
RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック副院長。1980年横浜市生まれ。2005年慶應義塾大学医学部医学科卒業。慶應義塾大学病院精神神経科、国立病院機構久里浜医療センターなどで精神科医として診療に従事。禅修行の後、2014年臨済宗建長寺派林香寺(横浜市)住職。寺務の傍ら都内及び横浜市内のクリニック等で精神科診療にあたる。『人生がうまくいく人の自己肯定感』(三笠書房)、『「精神科医の禅僧」が教える 心と身体の正しい休め方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など著書多数。
(写真=iStock.com)
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