※本稿は、川野泰周『会社では教えてもらえない 集中力がある人のストレス管理のキホン』(すばる舎)の一部を再編集したものです。
理性と感情がぶつかる「ストレス」の仕組み
ストレスとは、そもそも何かご存じでしょうか? 「ストレス」は、もともと物理学の言葉です。
まっすぐな物を曲げようとする際などに生じる物理的な力のことを、「ストレス」と言います。それを人間に当てはめ、心に負荷がかかった状態を「ストレス」と呼んでいます。つまり、ストレスとは、「理性」と「感情」がぶつかって、負荷がかかったときに生まれる精神的、心理的軋轢(あつれき)です。
言い返したいのに言い返せない……。
やりたくないのにやるしかない……。
このように理性と感情が一致しないと、「葛藤」が生まれます。このような状況が続くと、体調不良にもつながっていきます。
私の勤める心療内科クリニックには、心の悩みだけでなく、慢性的な体の症状を訴える方が日夜来院されています。体調不良が続いたことがきっかけで、上司や同僚にすすめられて、しぶしぶ心療内科に来てみたら、実は心の問題があった。こういう方がとても多いのです。
風邪をひきやすかったり、寝つきが悪くなる、などの徴候があれば、病気になる一歩手前の「未病」の状態です。ストレス管理の第一歩は、未病の状態を見逃さず、「自分の小さな異変」に気づくこと。こうしたちょっとした症状をスルーしていると、うつ病やパニック障害などのメンタル疾患になってしまうこともあります。会社に行くだけで、一時的にうつ状態になってしまう、「新型うつ病」の方も最近とても増えています。
毎日仕事をしていると、何かしら葛藤が生まれます。ストレスをなくすことはできない。だから腹を決めて上手に付き合っていく。ストレスを否定せず、ストレスに対応しようとする人ほど、結果的にストレスに強くなっていきます。
ストレス管理が上手な人はどうしている?
では、どうやったらストレスをコントロールすることができるのでしょうか。それは、「できるかぎりストレスを生じさせないこと」、そして「ストレスを持続させないこと」がキモになります。
心身の疲れを自覚できる人は、早め早めに対応し、ストレスを発生させないようにしたり、発生しても長続きさせないようにしたりしています。一方で、心の疲れに気づけない、気づいていてもうまく対処できない人は、体調を崩すところまで働いてしまいます。
私は精神科医でもあり、禅僧でもあるのですが、ストレスを根本的に解決するには、生活の中に禅的な考え方、すなわち「マインドフルネス」を取り入れることが必要だと考えています。
マインドフルネスは、欧米を中心に注目を浴びている心理療法のひとつで、「今この瞬間に、価値判断することなく、注意を向ける」というもの。マインドフルネスは集中力や生産性の向上、ストレスの軽減、コミュニケーション能力の向上といった効能から、多くの企業に取り入れられています。