NHKのテレビ放送も監視して遮断する中国当局

中国政府は天安門事件に対する見解を変えようとしない。

その見解は「天安門事件は学生と市民による暴乱で、軍の鎮圧は正しかった」というものである。さらに「目覚ましい経済発展を遂げたことで、国民から支持を受けている」と正当性を強調する。

この見解を維持するために、中国は徹底した言論と情報の統制を続けている。

たとえば6月4日の午前7時過ぎ(日本時間)、NHKが海外向けテレビ放送で、天安門事件に関するニュースを伝えようとしたところ、中国国内では8分間にわたって画面が真っ黒になり、映像と音声が遮断された。

中国国内で放送される外国のテレビ局の放送内容も監視されている。テレビだけではなく、フェイスブックやツイッターなどのSNSも規制されている。日本では信じられないことだが、中国では政府にとって都合の悪い情報はすべて消されてしまう。

習近平国家主席に「日中人権対話」の再開を求めたい

菅官義偉官房長官は6月3日の記者会見で「軍の実力行使による衝突の結果、多くの人命が失われる痛ましい事態に至った」と遺憾の意を示した。河野太郎外相も4日の記者会見で「(中国の人権状況には)懸念がある。自由、基本的人権、法の支配といった国際的に共有されるべき価値観は、中国でも保障されるべきだ」と語った。

ところで、日本と中国の間では1997年に人権分野での政策と協力について意見交換する「日中人権対話」がスタートした。しかし、2011年を最後に開かれていない。

中国の習国家主席が大阪で開かれる「G20(主要20カ国・地域首脳会議)」に出席する予定だ。安倍晋三首相が議長国、日本を代表して習氏と会談するが、その会談で必ず、日中人権対話の再開を求めるべきである。人権をめぐる日本と中国の対話は、今後の北朝鮮対応にも大きく関係してくる。そこを安倍首相は肝に銘じるべきである。