人工知能まで駆使する恐ろしい情報統制ぶり

朝日と反対の主張が多い読売新聞の社説(6月5日付)も、「人権や言論の自由を巡る状況は、著しく後退した。強権的な監視国家へと変貌しつつある中国の現状を深く憂慮する」と批判的に書き出す。

「事件に関する情報は隠滅され、事件自体を知らない若者も少なくない。真相が解明されぬまま、風化が進んでいるのは遺憾である」
「看過できないのは、習近平政権が反体制派や少数民族への締め付けを加速していることだ」

「風化」と「締め付けの加速」。中国は、天安門事件が風化し、歴史から姿を消すことを望んでいる。そうすれば異を唱える芽を摘み取りやすくなるからだ。

「中国では、ネット空間が政府の情報管理に利用され、強権統治を支えている。党や政府に批判的な言動が、人工知能(AI)や監視カメラで即時に把握され、封じ込められる。『国家の安全』を理由に正当化できる措置ではない」

人工知能まで駆使して思想犯を割り出そうとする。驚くべき情報の統制である。

中国の経済発展がニセモノだから、問題が噴出している

読売社説は指摘する。

「中国が豊かになれば政治改革に踏み出す、という日本や欧米の見通しは甘かったと言わざるを得ない。ポンペオ米国務長官は『中国が国際システムに融合され、開かれた寛容な社会に変わるという期待は打ち砕かれた』と述べた」

政治改革を経ずに、開かれた社会をつくることはできない。繰り返すように日米欧の見通しが誤っていたわけではなく、現在の中国の経済発展がニセモノなのである。真の豊かさではないのだ。だからいまの中国ではさまざまな問題が噴出しているのだ。

読売社説も次のように書く。

「共産党は、国民の生活水準を向上させ、一党支配への不満を抑え込んできた。だが、これまでのような高度成長は望めない。貧富の格差が広がり、環境汚染などの社会問題も深刻化している」

こう書いた後、読売社説は「習政権は、強権的な手法をどこまで拡大し続けるのか。国際社会は問題点を粘り強く指摘し、改革を促さねばならない」と主張する。天安門事件30年をきっかけに、あらためて中国政府に改革の必要性と重要性を認識させる必要がある。そのとき日本の果たすべき役割も大きいはずだ。

(写真=Penta Press/時事通信フォト)
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