トリドールHDの売上高は大幅増収

この時期の既存店客単価は前年同期比で上昇したが、客数は4月が2.4%減、5月が9.0%減と大きく減少した。既存店売上高は4月こそ前年を超えたものの、5月と6月は大幅減となった。

現在まで続く客数減は、このときから始まっている。18年4月以降の客単価は上昇傾向にあるが、客離れを補うには至らず、19年3月期の既存店売上高は前期比2.7%減と大きく減った。それまでは増収が続いていたので、値上げが響いたと言わざるをえないだろう。

運営会社であるトリドールHDの売上高は決して悪くはない。むしろ絶好調だ。19年3月期連結売上高は、前期比24.5%増の1450億円と大幅な増収を達成している(5月14日発表)。だがこれにはからくりがある。18年1月に香港の人気中華麺チェーン運営企業を子会社化したことが主な要因なのだ。この企業の業績が19年3月期の海外事業の業績に反映され、同事業の売上高が前期比2.9倍の302億円と大きく伸びることとなった。

出店攻勢は衰え、国内では飽和気味か

一方、丸亀製麺事業の売上高はさえない。19年3月期の売上高は0.5%減の899億円だった。出店により店舗数は増えたものの、既存店売上高が低迷したことが響き、減収となった。セグメント利益も減り、11.1%減の124億円にとどまっている。また、想定していた収益が見込めなくなったため、同事業で7億円の減損損失の計上を余儀なくされている。

国内での今後の成長は危うい。かつては出店攻勢により年に100店以上増えていたが、国内700店を超えた14年3月期以降、著しく伸びが鈍化している。19年2月期は25店の増加にとどまった。もはや出せる場所には出店しつくしたのか、主戦場だったロードサイド型の店舗数は伸び悩んでいる。一方、ショッピングセンター内の店舗数は緩やかに増えてはいるが、こちらも一時期ほどの勢いはない。国内では全体に飽和感が漂っているのだ。

この状況下で丸亀製麺が成長するためには、既存店の強化が欠かせない。特に季節限定の商品が鍵を握る。目新しさから集客が見込めるうえに、価格が多少高くても売れるので、客単価の向上が期待できるからだ。19年3月期は、「うま辛坦々うどん」(並盛り650円/18年10月発売)や「牡蠣づくし玉子あんかけ」(同670円/同11月発売)が好調だったという。