いい子だけど、ちょっと弱い

運というのは大事なもので、偶然や運がないと大会社の社長になどなれないでしょう。私は、自分は運の悪い人間だと思っています。運が悪いからインターネットなどをやってきたので、「日本が世界から遅れちゃいけない」と思って立ち上がったものの、なかなか理解されず、それでもやっと仕組みができたのでやめようと思ったら、それもできなくてずるずる続けてきました。ただ私の昔の仲間には、世の中で知られるようになった人が大勢いて、「もしかすると自分は人に運を与えるタイプなのかな」と思ったりします。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/iryouchin)

ただ、今の若い人を見ていると、運不運の前に努力しない人が多いと思います。人間は努力の結果で変わるもの。大成するためには、変わっていく要素がいります。優秀な人でも、自分の殻にはまってしまうと伸びません。逆に見かけがチャランポランでも、そういう精神を持った人もいます。自分を変える努力ができたうえでの運であり、成功なのです。

人間は本気で努力するときには余裕がなくなり、目が吊り上がってきます。上に行く人は、必ずそういう経験をしています。そこは、傍から見ていてもわかりますね。

今のIIJの社内にも、失敗ばかりしているけれども、「こいつ、面白いな」と思う人がいます。会社としては失敗するより成功してもらうほうがいいわけですが、私は「失敗する人は、何もやらない人よりはるかに見込みがある」と思っています。

何もしなければ、何も起きません。何か1つ、自分の持っているものを活かせればいいのです。そういう人を我慢して見守ってやるのが、上の人間の役割です。一方で「いい子だけど、ちょっと弱いな」という人もいます。仕事はやればやるほど増えていくもの。そこを耐えてやり切るか、自分に甘えてしまうかです。

今の日本は、まだ長期雇用の慣習が残っていて、ホワッとしていても生きていける国かもしれません。それでも向上心のある人は、本気で突っ走って壁を乗り越え、一皮剥けて変わっていくものです。

▼鈴木流 一流の条件
●殻を破ろうとしているか
●失敗しているか
●甘えずに仕事をやり切るか
鈴木幸一(すずき・こういち)
IIJ会長(CEO)
1946年生まれ。早稲田大学文学部卒業。日本能率協会等を経て92年、インターネットイニシアティブ企画(現IIJ)設立。94年IIJ社長。2013年より現職。
(構成=久保田正志 撮影=永井 浩 写真=iStock.com)
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