「大流行に発展することはないのか」

はしかの流行に対し、読売新聞は早くも3月16日付の社説のテーマに取り上げ、「強い感染力に十分警戒したい」(見出し)と注意を呼びかけている。

読売社説は「大流行に発展することはないのか。厳重な警戒が必要である」と書き出した後、こう現状を解説する。

「国立感染症研究所は、今年に入って3日までの麻疹(はしか)患者が、累計で285人に上ったと発表した。昨年1年分を早くも超えた。この10年間で最速のペースだ」
「地域別では、大阪が最多の101人で、21都道府県に広がる。気を緩めることはできない」

さらに読売社説は指摘する。

「疑わしい症状が出て医療機関にかかる場合は、院内感染を避けるため、事前に電話で相談し、指示を仰ぐことが求められる」

この指摘は適切だ。感染を広めないためには患者・感染者のこうした注意が強く求められる。

「空港などの水際対策では防ぎきれない」

読売もワクチンの重要性を主張する

「最も有効な予防手段は、ワクチン接種である。十分な免疫を得るためには、2回の接種が望ましい。母子手帳などで接種歴を確認し、必要があれば、早めの接種を検討してもらいたい」

沙鴎一歩の主張と同じく、読売社説もワクチン接種の重要性を訴えている。

「日本では、2006年に小児らの定期接種を2回に増やし、患者数は大幅に減った。15年からは、世界保健機関(WHO)に、国内に土着ウイルスが存在しない『排除状態』と認定されている」
「だが、世界的には感染が再拡大している。WHOは2月、18年の世界の感染者数は暫定で約23万人と、前年より6万人増えたと発表した。主に途上国だが、フランスやイタリアなどでも多い」
「このため、外国からの観光客や帰国者が、ウイルスを国内に持ち込んでしまう。空港などの水際対策では防ぎきれない。海外の流行地に旅行する人は、自分に免疫があるか、特に注意してほしい」

読売社説に付け足すと、今回のはしかの流行の中心は2回接種に乗り遅れた人たちだろう。いま20代から30代になるはずだ。彼らが面倒がらずに率先してワクチンを接種することが求められる。国や自治体が代わりに接種費用を負担したり、雇用先が進んで接種の機会を作ったりするべきである。

ワクチン接種は社会防衛である

読売社説は風疹にも触れる。

「風疹も昨秋から流行している。妊娠中の女性が感染すると胎児に重い障害が出ることがある。定期接種していない30~50歳代の男性は、罹りやすい。感染を広げないよう予防策を講じてほしい」

最後にこう指摘する。

「予防接種には、自分だけでなく、社会全体を守る役割もある」

良い指摘だ。ワクチンをはじめとする感染症の予防を着実に実行することは、その病原体から自分自身を守ると同時に、致命傷を負う健康弱者をも守ることにつながる。ワクチン接種は社会防衛である。

いまのところ、はしかの流行を社説に取り上げている読売新聞だけだ。他の新聞も社説に書いて警戒を求めてほしい。新聞は社会の公器だからだ。

(写真=BSIP/時事通信フォト)
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