提案書はA4用紙1枚に収められる

NHKでは、番組の企画を提案する場合、提案書をまとめます。番組の規模には関係なく、10分程度の短時間の番組も1時間半のスペシャル番組も同様に、A4の用紙1枚に書きます。内容は「仮タイトル」「ねらい」「構成要素」「結論」などです。

提案書の分量自体は大したことがありませんが、取材をしっかりしていないと、構成要素はなかなか書けません。反対に、取材は十分にしても、提案者の頭の中が整理されていないと、多くの要素が詰め込まれていて、どういう番組を作りたいのか、不明瞭になってしまいます。

取材を徹底的に行なった上で、要点をしっかりと整理すれば、提案書や報告書はA4の用紙1枚に十分に収められるというのが私の実感です。もちろん業種や職種によって多少の違いはあるでしょうが、これは多くの仕事で共通しているのではないでしょうか。

調査を十分にした上で、要点を伝えるのが提案書や報告書の持つ意味合いなのですから、必要なことを簡潔に書く必要があります。

演繹法か、帰納法か

報告書などをまとめる場合、論理学でいうところの「演繹法」と「帰納法」の考え方が参考になります。

演繹法や帰納法といわれても、「そういえば、そんなこと、昔、習ったな」くらいの意識で、具体的な意味は忘れてしまっている人が多いかも知れません。少しおさらいしておきましょう。

演繹法とは、ある事柄を前提として、具体的な一つの結論を得る推論方法のことです。これに対して帰納法とは、個別具体的な事例から、一般的な規則を見出そうとする推論の方法です。

こう言っても、まだピンとこないかもしれません。少し例をあげて説明しましょう。

たとえば、「バラにはトゲがある」という前提から出発して「ハマナスはバラの仲間だから、ハマナスにもトゲがあるだろう」と推論するのが演繹法です。これに対し、観察した100本のバラすべてにトゲがあったとします。そこで、「バラにはトゲがある」という結論を出すのが帰納法です。

ごく簡単にいえば、先に結論ありきが演繹法で、いろいろと情報を集めて結論を構築していくのが帰納法です。