「たとえば、ある飲食の企業が会員登録と引き換えに割引やおまけ、景品などをお客様に提供する。登録はNCネットワークを経由しないとできませんが、お客様には楽しみが生まれ、企業は一社では集められない大量の顧客を対象に安価でマーケティング調査ができる、という仕組みです。当時はWindows98の登場からまだ2年。インターネットの世界の時間軸からすれば相当昔です。中小の一企業が集められる情報には限りがあるから、寄り合う必要があると考えたのです」(同)

90年代後半にインターネット事業部を設立(写真上)。試行錯誤の末、中小企業の横のつながりで顧客を共有し、各社ごとのマーケティング調査を行える仕組みを構築した(同下)。

インターネットに馴染んでいない企業も参加しやすいよう、少しの会費でハードルを下げて各社にネットワークへの参加を募りました。会員企業にはフリーアドレスも提供。ホームページには会員企業に所属する人だけが読めるさまざまなコンテンツを掲載。訪問者を増やす努力も重ねました。

「評論家の田原総一朗さんに登場していただいたら、一気にアクセスが増えたんですよ。それでコンテンツの重要性も学びましたね」(同)

1年間で集めたデータが「当時のJR九州の持つ量とほぼ同じ」(妹尾氏)約126万人分。06年にはこのビジネスモデルが世界電子商取引学会に、日本から唯一ノミネートされました。

「貴重な情報をたくさん持つと“情報の施主”になれます。それから、弊社は一目置いてもらえるようになった。大手デペロッパーだって施主にはペコペコしますよね(笑)。それだけ施主というのは強い立場なんですよ」(同)

では、こうした視点と行動力を、妹尾氏はなぜ得ることができたのでしょうか。