中小零細が束になれば、大手に使い捨てられない

高光産業がこうした仕組みを立ち上げられたのは、そのアイデアのみならず、妹尾氏を信頼し、参加してくれる企業がいてこそ。妹尾氏の何がそれを可能にしたのでしょうか?

妹尾八郎社長●(写真右、左は関連会社のシステムライン・藤本浩三社長)1955年、福岡県生まれ。78年慶應義塾大学法学部卒業、商工組合中央金庫入社。81年、髙光産業入社。95年より現職。

私は、前職の商工組合中央金庫(商工中金)時代の経験が大いに関係していると思います。大手と対等に仕事ができぬつらさは、ご自身でも体験されているはずですが、商工中金出身ゆえに多くの中小零細の内情を熟知している妹尾氏は、理不尽な例もたくさん見聞きしたでしょう。

そこで、中小零細がどうすれば生き残れるかを真剣に考え、「力を合わせて束になって強くなれば、単なる下請けとして大手に使い捨てにされずに済む」という気付きを得て、そのための方策を考え抜いたのです。

「そもそも、寂れゆく地方の商店街を何とかしたいと考えたのが原点」という妹尾氏は、まず地銀や地域の大手から声をかけ、中小零細に拡大していきました。顧客の共有という発想に抵抗する商店主には、「地域全体で顧客を囲い込めば、パン屋の来客が隣の肉屋で肉を買っても、その客を奪われたことにはならない」という例えで説得したそうです。

「金も知恵もないなら汗をかけ」

今も“思い立ったら即実行”“誰もやっていないことだから、やる意味がある”が口癖の妹尾社長ですが、この仕組みの中核となるインターネットにいち早く賭けた先見の明は、称賛に値します。

「1990年代後半の某会合で、eメールやホームページといった言葉を初めて聞き、ハッとしました。すぐさま社内でインターネット事業部を立ち上げ、何ができるかを探りました」