集中度をより高めるためにA4判のテキストページにある黒点を凝視する。それから縦や横に複数ある黒点を追って、視線の上下、左右、対角線移動をそれぞれ2~3分ずつ行う。最後は黒点の円移動でクールダウンしていく。こうして集中して目を動かせるようになったら、今度は視野を拡大し、記号や文字が1ページに9ブロック印刷してあるテキストを使ってブロックずつ見ていくトレーニングをする。ここまでは、まさに目の反復訓練にほかならない。
この段階で、おおむね講座の半分を終了。時計の針は午後2時を回ったところ。ここからは当日用意されたテキストを用いて、実際に小説や評論などをこれまでトレーニングしてきたノウハウで速読していく。ちなみに、小6の児童には子供向けのプリントが渡された。
その際のポイントは「見出しをヒントにすることだ」と講師は説明する。例えば、新聞で「東名で逆走事故」とあれば、「自動車を運転する高齢者」を思い浮かべるといった具合だ。すると、本文の内容も、ある程度イメージすることができる。
一般的な書籍であれば1行36~41字を3つに分割した文字ブロックにしてスムーズに視点を移動するということだ。絶対に単語を追ったり、読んだりしてはいけない。ブロックを見るときには必ず視点を留め、漢字熟語やカタカナを脳裏に焼き付けるといった感じで進む。目標は1分間で1000字である。
ここで講師は「覚えている単語をできるだけ多く書き出す」ことを指示してきた。記憶さえしていれば、その言葉から文章の流れが想起できる。この方法は短期的記憶力を鍛えるにはいいかもしれない。とはいえ、これを一朝一夕にマスターするのは至難の業。とりあえず、講座でやり方を学習し、その後は新聞のコラムなどで、ひたすらトレーニングするしかないというのが偽らざる実感だ。
読書の目的は、頭をよくすること
とはいえ、速読ができるようになれば本物の“読む力”が身につくのかというと、それだけではどうも心許ない気がする。そこで、経営コンサルタントで、『ビジネスマンのための「読書力」養成講座』の著書があり「読書は、最強の勉強法!」と語る小宮一慶氏に話を聞いてみた。
「私は講演の準備に際して、知りたい情報を短時間で得たいということがあります。例えば、医師を対象に病院経営の話をするとき、専門書や雑誌で最新の業界事情や医療財政のデータなどが載っているところだけバーッと読んで会場に入る。その読み方はまさに速読を用いているわけです。キーワードを拾い上げていけば事は足りますから、必要のないところは章ごと捨ててもかまいません」