つまり、読書法は目的によって使い分けていけばいいと小宮氏はいうのである。そしてそれは、(1)速読、(2)通読レベル1、(3)通読レベル2、(4)熟読、(5)重読――の5つ。このうち速読は、求める情報を探すために、要点を素早く把握する読み方なのだ。

このうちの速読なら、次の部分に注目するのが小宮流。すなわち、(1)目次、(2)見出し、(3)本文中の太文字で書いている部分、(4)各章、各項の冒頭、(5)はじめに、あとがき、(6)データ、数字、図表、固有名詞である。ここにエッセンスが集約されていることが多い。ただし、それを見つけ出すには、日頃からの勉強や経験が求められることはいうまでもない。

しかし、小宮氏は「読書の一番の目的は頭をよくするためです。速読ではそれはできません。やはり、むずかしい本にも挑戦しなければいけない。そうすることで論理的思考力のレベルが高くなっていきます。だからこそ、通読も熟読も必要で、それまで理解できなかったことがわかるのが読書の醍醐味です」と語る。

読書そのものが、トレーニング

まして、いまの世の中はIT化の進展で便利になりすぎ、生活のパターンは単純化されているから、人がモノを考えない。だからこそ、ビジネスパーソンにとって論理的思考力が強力な武器になるのだ。

そのため、速読だけではない読み方が求められる。そこに小宮氏が挙げる読書法が意味を持ってくる。面白いのは通読に2パターンがあるところで、レベル1は最初から最後までふつうに読むもの。レベル2のほうは、重要と思われるところに線を引き、本の余白に気づいたことを書き込んでいく読書法である。

「読書の効用は情報をインプットするためだけでなく、むしろ、プレゼンやレポートとしてアウトプットするということです。メモをすることで、脳のデータベースに蓄積、整理でき、即ビジネスに生かすことができるでしょう。気に入った本や役に立つと思った本なら熟読、重読することを勧めます」

こうした小宮流の読書法を教えてもらうと、読書は速読だけでは十分ではないということがよくわかる。精読吟味して、自分の仕事に関しては専門家並みに。また、すぐれた本は人生のバックボーンを形成する糧となる。だから、読書そのものが日々の大切なトレーニングだといっていい。

(写真=Getty lmages、iStock.com)
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