40年の経験を、地方企業で生かす

そこで次の選択肢として注目されるのが、大企業から中小企業、ベンチャー企業への転身だ。

「シニアにポストを用意できない大手から大手への転職は、もはやごく僅か。大手で培った経験を中小企業やベンチャーで生かすケースが増えています」と梅本氏。事業を拡大したい中小企業が、団塊世代の退職で空いたポストに、経験ある人材を求めるケースが増えているという。都会に比べて、特に人材不足に悩む地方では、自治体を挙げてUターン・Iターン組を積極採用しようとする企業も多い。

梅本氏はこんなケースを紹介する。ある50代後半の大手メーカー社員は、海外子会社で一大プロジェクトに参加するなど、順調なキャリアを描いていた。しかし、よりやりがいのある仕事と待遇を求め、転職を決意。しかし、数社で面接を受けるも、「自分の強み」をうまくアピールできずに次々と失敗したという。

「結局その方は、転職活動をする中で、自分の強みが海外で事業を立ち上げた経験と英語力だと気付くことができ、その経験を生かせる地方の中小企業に転職しました」(同)

50代ともなれば、自分のスキルや経験も、一言で表せるような単純なものではない。梅本氏によれば、だからこそ、本当に他者から求められる「強み」を見つけるのに時間がかかってしまう人が多いのだという。シニアの転職について、当人たちに意識が足りていないことも難航する理由の1つだろう。

マーケティングコンサルタントの酒井光雄氏はさらに厳しい現実を指摘する。「50代で転職した人の平均的な年収は400万円。バブル世代の彼らにとって、この数字は厳しいものですが、それが現実です。幸せな転職をしている人は多くないでしょう」。

さらに酒井氏は、「そもそも転職エージェントに登録しようとしている時点で、負け組です」と手厳しい。

「なぜなら、優秀な人材なら、すでに他社からオファーがきているはずですから。デキる人ならば、それくらいの人脈、ネットワークは持っているものですし、仕事ぶりというのは周りが見ているものです」

社員の個人的なつながりで人材を紹介する、いわゆるリファラル採用。この採用法は、若者に限った流行ではなく、むしろ、経験を積み人脈をつくってきたシニア世代にこそ最適といえる。