中小企業経営者の、リアルな声

実際のところ、中小企業の経営者は大手からの転職をどう考えているのか。1887年創業で、岐阜羽島の老舗繊維・樹脂メーカー、三星グループの岩田真吾社長は大手から人材を採用した中小企業の経営者だ。実際に採用したのは、大企業で工場管理の経験がある課長クラスの人材だった。

「プラスチックの着色加工というニッチな分野の責任者が欲しかったので、ただ工場管理の経験があるというだけではなく、専門的な実績が必要でした。さらに、できれば、岐阜で働くモチベーションのある人がいい。数名の候補をヘッドハンターに挙げてもらい、結果として、筆頭候補の人を採用できたんです。4月に採用して半年たちますが、とてもいい働きをしてくれています。本人も、大企業で承認の業務が増えてきたところから、現場で幅のある仕事に変わったので楽しんでくれているようです」(岩田氏)

大企業では、やることが明確化されている分、融通がきかないこともあるが、中小では会社に合わせて柔軟に制度も含めて事業全般に提案してくれる人材が求められる。「自ら積極的に動く人でないとダメ。その条件も満たしてくれました」(同)。

都会の大企業から、地方の中小企業へ。老後はそのまま地元に貢献しながら生きる──。自分が培ってきた財産の真価を知り、キャリアを考えることが、シニアの企業人が幸せになるために求められている。

梅本郁子
ライフワークス社長
東北大学教育学部卒。1986年、リクルートに入社。教育研修事業の営業や、リクルート人材センターなどを経て、2000年にミドル・シニア世代のキャリア支援を行うライフワークス設立。
 

酒井光雄
マーケティングコンサルタント
ブレインゲイト代表。学習院大学法学部卒。著書に『男の居場所』(マイナビ出版)、『「マーケティング」大全』(かんき出版)など。プレジデントオンライン「社長の参謀」で連載も持つ。
 

岩田真吾
三星グループ社長
1981年、愛知県生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後の2003年に三菱商事に入社。その後、ボストン コンサルティング グループを経て、09年に三星グループに入社。15年より現職。