【田原】さっき7次受けまであるとおっしゃった。仮に配送料が1000円だとすると、末端は300円くらいになるということ?

CBcloud 代表取締役 松本隆一氏

【松本】そうです。あと面白いのは、自分が1000円で友達に投げた案件が、どんどん回って300円になって返ってきたりします(笑)。

【田原】そりゃむちゃくちゃだ。ドライバーが20万人いればすぐ見つかりそうなものだけどね。

【松本】企業間にも、定期的に同じルートを回る仕事と、スポット的な仕事があります。多くの運送会社やドライバーは安定的に稼げる定期の仕事で普段は体が埋まっています。かといって、スポットの仕事は単価が高いので逃したくない。そのためいったん引き受けて横に流すわけです。一方、運送会社やドライバー同士のネットワークはせいぜい30人前後。その中に体が空いている人を見つけるのは難しく、必然的に多重構造になっていく。ようやく見つかっても、定期の仕事からあぶれた人なので、必ずしも質は高くないという問題もあります。

荷主とドライバーを90秒でマッチングさせる

【田原】業界の問題はわかりました。義理のお父さんがその問題に気づいて、松本さんがそれをプログラミングで解決しようとした。具体的に何をしたのですか?

【松本】荷主と体が空いているドライバーを直接つなげる仕組みをつくろうと思って、まず国交省を辞めました。結婚生活のことを考えるとそのまま勤めていたほうがよかったのですが、義父が「娘のことはいいから」と言ってくれまして。しかし、退職の1カ月後、そう言ってくれた義父が突然亡くなった。急遽、私が義父の会社の案件を継ぐことになり、起業して2年は普通に運送業をしていました。

【田原】それから?

【松本】義父が生前に書いていた手書きの企画書が出てきたんです。それがいままさに私たちがやっているモデル。これこそ実現させなければいけないと思って、運送の営業をやめてプログラミングに集中しました。3~4カ月籠って、「軽(ケイ)タウン」というサービスの仕組みを構築。「軽タウン」は、いま「ピックゴー」に名前を変えていますが、コンセプトや基本的な仕組みは同じです。

【田原】ピックゴーを使うと、従来と何が変わるのですか?

【松本】これまでは荷主がドライバーを探すとき、荷主が各方面に何度も電話をしなくてはいけませんでした。しかし、ピックゴーなら案件の情報を1度入力するだけでいい。体が空いている登録ドライバーが、それを見て向こうから連絡してきます。

【田原】ん? 荷主が何度も電話するってどういうことですか。運送会社に電話を一本入れたら、あとはドライバーを探してくれるんでしょ。多重構造かもしれないけど、荷主からすると手間は変わらないんじゃないですか。

【松本】じつはそこにも業界の闇があります。最初に電話を受けた運送会社が依頼を引き受けても、実際に体が空いているドライバーが見つかるまでに早くて30分、遅ければ数時間かかります。それでは時間がかかりすぎるので、荷主は二股というか、10社くらいに電話をかけて、もっとも早くドライバーが来るところに仕事を流す。たとえばある会社から「1時間後にドライバーが向かいます」と返答があっても、30分後に別の会社から「10分で行く」と返ってきたら、後者を優先させるんです。