「利益のすべてが物流費で吹っ飛ぶ」沖縄になぜ?
東京・青山を本拠地にする創業113年の老舗スーパー「紀ノ国屋」の進化が止まらない。首都圏を中心に店舗展開してきたいわゆる高級スーパーだが、全国各地で近頃、「KINOKUNIYA」の商品や看板を目にすることが増えてはいないだろうか。
60年以上のロングセラーを誇る紀ノ国屋の人気商品「アップルパイ」は、今や北海道から九州・沖縄まで全国各地の店舗で売られるようになり、今年春以降、海を超えシンガポールや香港、台湾のアジアでも販売が始まろうとしている。
沖縄県の「リウボウストア」で売られているアップルパイの価格は1274円(5号サイズ)。首都圏の972円よりもやや高いが、紀ノ国屋の髙橋一実副社長は「離島に商品展開するとなると、利益のすべてが物流費で吹っ飛んでしまう。沖縄でこうして商品を並べられたことで、最初の高い壁は超えた。次に乗り越える壁は、販売価格の差をなくしていくことだ」と話す。
コロナ禍、物価高でも4期連続の増収
紀ノ国屋の販売拠点数(直営)はコロナ前の2019年度30店舗から、24年1月現在45店舗に拡大。売上高は約217億5300万円から今期23年度末の通期予想は約255億7600万円で、19年度比38億円超の増収を見込む。コロナ禍を通して4期連続増収を達成した。
少子化、コロナ禍、物価高、物流コスト高で拡大路線には幾重にも壁が立ちはだかる。輸送力が不足し物が運べなくなる、いわゆる「2024年問題」への対応も重くのしかかる。にもかかわらず、「KINOKUNIYA」はアメーバのごとく、拡大路線を推し進めている。
そんなことがなぜ可能なのか。取材を進めると、紀ノ国屋がこれまでにないやり方で全国各地から沖縄を基点に海外市場へと、商品供給を見込んだ徹底的な物流改革を仕掛ける意図が見えてきた。