金沢店へ配送→富山の惣菜を調達→東京へ

一方の紀ノ国屋側も、自社商品の仕入れを増やして復路便の中身を充実させようと、首都圏や都市部の売り場で販売できる地方商材の掘り起こしに全力疾走する。そんな「両輪」で走らせる混載貨物便がその特徴だ。

帰りのトラックに載せることを念頭に、地方の“逸品食材”を仕入れ、昨年6月から都内の店舗で売り出したのが、富山県産の「白えびかき揚げ丼」と煮物惣菜6品。

富山県産「白えびのかき揚げ丼」富山からのおくりもの
写真提供=紀ノ国屋
富山県産「白えびかき揚げ丼」富山からのおくりもの

金沢店まで商品配送を終えていったん空になったトラックが、富山の食品メーカー「ふたつわ食品」の工場に向かい、かき揚げや惣菜品を調達して復路に就く。東京の倉庫へ帰る途中、惣菜品は東京都・三鷹にある紀ノ国屋のセントラルキッチンに届けられ、かき揚げ丼の弁当や煮物のパック商品となり、ランチタイムの首都圏の店舗に並べられる、という流れだ。

出会いは、ふたつわ食品の関連会社が運営する富山の食品スーパー「ヴァローレ」が、紀ノ国屋の商品を仕入れ、常設の販売コーナーを開設したことがきっかけだった。

店内に並ぶ北陸地方ならではの惣菜のおいしさと質の高さに目をつけた髙橋副社長が、今度はヴァローレを通して惣菜を仕入れさせてほしいと頼み込んだ。UPSも加わり、衛生管理をクリアするためのパック方法や集荷時間、ルート変更の試行錯誤を経て、富山―東京間の毎日配送を実現した。売り場で毎日完売し、早くも、紀ノ国屋の定番人気商品の仲間入りを果たしている。

相乗り企業を増やせば物流コストも下げられる

その運賃形態にも特徴がある。

通常、物流会社にとってのミッションは、「トラック1台あたり、飛行機1機あたり、船1便あたりの利益を最大化することにある」(安田さん)。物流会社が主体となって荷量と貨物便のバランスを調整し価格をコントロールするのが一般的だが、紀ノ国屋方式ではそうはならない、という。

紀ノ国屋の商品を載せた貨物便は、混載割合に応じて運送料金を荷主間でシェアする方式で、他社の混載貨物が増えるほど、ベースカーゴとなる紀ノ国屋が先行的に負担した費用を低減させる形態をとる。紀ノ国屋が借り上げる貨物便への相乗りを歓迎し、混載企業にとって従来よりも割安な料金で運べるケースが相次いでいる。いわば、物流版「ライドシェア」なのだ。

混載企業にも、発地・着地の両方でUPSの配送センターを在庫保管拠点として使ってもらうことで、集荷と配送の効率性を高め、割安感のある輸送形態を実現した。

さらに、物流ルートの再構築は結果的に、トラックドライバーの時間外労働時間の上限が課される2024年問題への対応も加速させた。