老後に必要なお金はどのくらいか。医師の和田秀樹さんは「世間の人々は、不安、不安という言葉に惑わされて、必要もないのに貯金に励んでいるように見える。しかし、厚生年金がもらえる予定なら、老後の資金としての貯金は500万円あればいい。将来的に年金の受給額が減るという噂もあるが、年金が国の制度である以上、これから20~30年は、食べるのに困るほど減らされることはないはずだ」という――。

※本稿は、和田秀樹『死ぬまでひとり暮らし 死ぬときに後悔しないために読む本』(興陽館)の一部を再編集したものです。

貯金を計算して落ち込む老人
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「年金+500万円」、これだけあれば生きていける

世間では、老後の心配を煽って、ことさらに貯金をすすめる風潮があります。しかし、これは間違いです。

実際のところ、老後にはほとんどお金がかかりません。

誤解を恐れずにいえば、現在、そこそこの大企業に勤めていて、定年まで大過なく過ごす自信があれば、老後に備えた貯金は1円たりとも必要ありません。

なぜなら、生活費を賄えるだけの年金がもらえるし、退職金ももらえます。企業年金にまで入っている場合は、生活費を賄ってもお釣りがくるくらいです。

さらにいえば、介護保険を使えば、寝たきりになったときに入る有料老人ホームの入居費用もひとり当たり500万円程で済んでしまいます。今は、これさえ取らないホームも増えているくらいです。

ここで、老人ホームに入る場合にかかるお金の話を少し説明します。

有料老人ホームに入居する場合、介護保険が使える要介護認定の下りた人であっても、月々のホームの家賃や食費は全額自己負担になります。

額は、夫婦で入居したとしても、一般的なホームの場合、月に20~25万円というところなので、年金で賄える額です。

「立ち上がりや歩行などが自力では困難で、支えが必要。排泄や入浴、衣服の着脱などに全面的な介助が必要。いくつかの問題行動や理解の低下が見られることがある」という要介護3の人の場合、介護保険の利用限度額は月27万円前後なので、自己負担は約3~9万円でかなりのレベルの介護が受けられることになっています。