生活保護は元をとるだけのこと、活用すればいい

それでも、万が一、生活が成り立たなくなったときには、生活保護を活用すればいいのです。

「生活保護を受けるなんて恥ずかしい」などと思う必要はまったくありません。私たちは、これまで相当な額の税金を払ってきました。ただ、その元をとるだけです。

開き直ってセーフティネットを活用しましょう。

これは知らない人も多いのですが、年金の額が厚生労働省の定める最低生活費に満たなければ、その差額がもらえます。

年金暮らしで貯金がゼロという人は、積極的に申請するべきです。また、車や持ち家も、それが「どうしても生活に必要」とみなされれば、生活保護受給者も特例で所有できるようになっています。覚えておいて損はありません。

生活保護を活用すれば、医療費もタダになります。入院費用も基本的にタダです。もちろん、個室入院などはできませんが、タダはかなり大きなメリットでしょう。

世界的に見ても、日本は福祉が充実しています。遠慮深い日本人は、国のお荷物になってはいけない、などと遠慮して、当然の権利を手放しているのです。

こんなにもったいなく、為政者にとって都合のいいことはありません。

繰り返しになりますが、老後に必要なお金は、年金の不足分の生活費と、500万円です。そのほかに、趣味に使うお金を確保できたら、充実した余生が送れます。

寝たきりになるまでには、まだまだ時間があります。やりたいことをガマンしなくてもいいように、自分の趣味に見合った金額を、各自で判断して貯金しておきましょう。

70代から「高額サプリや健康食品」では遅い

60歳は分岐点です。

美容や審美歯科、ホルモン補充療法、サプリメントと、これからも若さを保とうと思ったらお金がかかります。

服を新調したり、美味しいものを食べに行ったり、旅行や趣味にいそしむのにもお金がかかる。脳の老化予防のために勉強するのにも、恋愛や遊びをするのにもお金は必要になってきます。かけられるお金があるなら、今こそかけるべきです。

ヨボヨボになってから高額なサプリメントや健康食品を買い込む高齢者はたくさんいますが、はっきりいってちょっと遅い気がします。70代になってから慌てても、効果はそれほど期待できません。

それよりは60代、いやもっと若い頃から小出しにメンテナンスを行っておくほうが、若さを長く保てるし、病気や老化も防げます。

老化を遠ざける生活を今から送っていれば、いきなり体や脳にガタがくることもありません。結果的に老人になってからもお金がかからないのです。

和田秀樹『死ぬまでひとり暮らし 死ぬときに後悔しないために読む本』(興陽館)
和田秀樹『死ぬまでひとり暮らし 死ぬときに後悔しないために読む本』(興陽館)

ガマンは老化を早めます。老後に備えてお金をとっておこうと、ガマン生活、節制生活を送っている人は、気をつけたほうがいいです。

ガマンの積み重ねで、ストレスがたまり、いざ老後がきてみたら、不健康で気力が湧かず、見た目もヨボヨボ、何もやる気が出ないということになってしまう可能性があります。

「老後のために」と考えたはずが、それによって肝心の老後が灰色になってしまっては、意味がありません。

最後の最後まで充実した人生を送るためには、ここがお金のかけどころなのです。

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