要介護でなければ老人ホームは意外と安く済む

では、なぜ入居費用が500万円で収まるのかというと、有料老人ホームの価格破壊です。

ホーム側からすると入居者からの家賃や食費に加え、介護保険からも安定した収入が得られることになります。そこで、最初の入居時の費用を抑えめに設定したというわけです。老人ホームも過当競争に勝たなければならない時代なのです。

ただし、これは「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた「介護付有料老人ホーム」の場合の話です。そのほかの施設は「住宅型有料老人ホーム」、「グループホーム」があります。

住宅型有料老人ホームは、介護サービスを使っただけ自己負担額が増えるシステムなので、介護がほとんど必要ない高齢者は安く済みます。

対して、寝たきりなどで多くの介護が必要になってくると、費用もかかってくることになります。それでも、介護保険の範囲内のサービスなら、要介護5になって限度額いっぱいまで使っても、自己負担額はもっとも低い場合3万6000円程度です。

公的機関が運営する特別養護老人ホーム(特養)は、待機者が全国で27.5万人といわれているので、かなりの入居待ちを覚悟しないといけません。

それを考えると、民間の老人ホームを視野に入れておいたほうがいいでしょう。立地やサービスがそれなりにいい老人ホームでも入居費用が500万円前後で済むところはたくさんあります。

老人ホームで運動をする人たち
写真=iStock.com/Narongrit Sritana
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不安という言葉に惑わされて、必要もないのに貯金に励む人たち

さらに高齢になり、ひとり暮らしが難しくなってきたとしても、このくらいなら、生活費を差し引いた年金の余りと退職金ですべて賄えるはずです。そんなわけで「老後に備えた貯金は1円たりとも必要ない」のです。

「大企業には勤めてないし」。こう不安に思った人も、安心して下さい。

結局のところ、寝たきりになったときに必要なお金は、やはり500万円です。

ヨボヨボになるまでひとり暮らしを続けたとします。いよいよ立ちいかなくなった。そうなったときには、旅行に行くわけでもないし、習い事をするわけでもありません。

普段の生活ができればいいのです。厚生年金がもらえる予定なら、老後の資金としての貯金は500万円あれば大丈夫です。心配は、杞憂に過ぎません。

将来的に年金の受給額が減るという噂もありますが、年金が国の制度である以上、あなたが受ける頃であれば(つまりこれから20~30年は)、食べるのに困るほど減らされることはないはずです。

私には、世間の人々が、不安、不安という言葉に惑わされて、必要もないのに貯金に励んでいるように思えてなりません。