そのうえ、名前に「金」が付くこともあって「お金にうるさい」といった人間臭さを加えることで、親しみやすさや愛らしさが生まれています。
さらに浦島太郎は漁師さんで海好き。現在の海好きと言えばサーファーだ、などと設定を作っていきました。そして知性より体力、とにかく元気と勢いはある、といった設定を作り上げていきました。
“ちょっとの裏切り”が強い印象を残す
一方、昔話では悪役にされることが多い鬼はシリーズ途中から登場します。
そのためキャラクター設定を考える際、「あとから登場する」「下級生として入って来る」という状況でも、すんなりはまるキャラクターがいい、ということになりました。
そこで生まれたのが悪役、つまり不良やヤンキーという基本設定で、先輩方の懐にすっと入り込む、後輩気質の「鬼ちゃん」です。
CMでの設定は、桃太郎からすでに成敗されたあとから始まっており、「ケンカのあとはもう友だちっスよね」と言ったかと思うと、初対面の金太郎の斧を見て「これカッコイイっスね」「オシャレー」とおだて、その懐へ入り込んでしまいます。
これはつまり、「鬼」という典型的な悪役なのに愛される理想的な後輩像、というギャップを重ねることでお茶の間に強く印象が残るキャラクターを作り上げた、というわけです。
これは私たちの毎日でも一緒。日ごろから、自分の見た目や服装、肩書きなど、外部から想起されるイメージと近いキャラクター設定を理解しておく、というのは重要だと思います。
それでコミュニケーションを重ねる中で、相手のイメージや期待をどこかでちょっと裏切る、というのは相手に強い印象を残す演出法であり、毎日のコミュニケーションでも使える効果的な方法のように感じています。
CMディレクター
1976年鳥取県生まれ、2002年TYO入社、13年よりフリーランス。手がけたCMにau/KDDI「au三太郎」、日野自動車「ヒノノニトン」、家庭教師のトライ「教えてトライさん」、トヨタ自動車「TOYOTOWN」、トクホン「ハリコレ」など。ACCグランプリ、ACCベストディレクター賞、広告電通賞優秀賞、ギャラクシー賞CM部門大賞など受賞多数。これまでに100作以上手がけた「au三太郎シリーズ」はCM好感度で4年連続1位(CM総合研究所調べ。2015年度-2018年度)。