「au三太郎」シリーズは昔話をモチーフに制作をしてきましたが、感想を聞くと「金ちゃんの性格が好き」とか「この先の展開が気になる」などと言ってもらえるようになりました。
何年もCMを作り、それを見続けていただいたこともあり、少なからず「愛着」のようなものがみなさんの間にも生まれているのかもしれません。
毎日触れ合うからこそ親しみが生まれる
財布やカバンを新調すると、最初は何だか収まりが悪い。でも使いこんでいくうちに、自分だけのものになって馴染んでいく。これと同じで毎日流れるCMで同じキャラクターを見ていると、次第に馴染み、親近感が湧き、親しみが生まれていく。
それは、毎日触れ合っているからに相違ありません。多くコミュニケーションの機会を得られれば、次第にその先に感情移入をするようになり、「好き」になってもらえるのです。
ただし、正直「好かれる」のは簡単でなく、一筋縄ではいきません。なぜなら、好かれようとしても、それだけで好かれるものではないからです。
しかも「好かれよう」という気持ちが出すぎてしまうと「いやらしい」面が同時に出てしまいかねません。「この人、私に好かれたいんだな」などと思われてしまうと、逆に相手の気持ちが冷めてしまうことも多い。その立ち居振る舞いやたたずまいのチューニングは、容易ではありません。
でも、そこのニュアンスを間違えさえしなければ、多く触れ合うことで必ず「愛着」は生まれてきます。それこそが僕が著書で紹介した「共感スイッチ」の核心、その一つです。
三太郎たちが生まれるまで
「au三太郎」シリーズでは、「桃ちゃん」こと桃太郎、「浦ちゃん」こと浦島太郎、「金ちゃん」こと金太郎をはじめとして、とても個性の強いキャラクターが登場します。
そういったキャラクターの設定や個性を検討する際、とにかく関係者でアイデアを出し合い、時間をかけてじっくりディスカッションします。
CMで訴求する内容は毎回変わるので、むしろ、キャラクターにどんな個性を持たせて、以後どんなことをさせようか、ということを考えるほうに時間を掛けることがよくあります。
たとえば昔話での金太郎は、正義感と力が強く、クマと相撲を取って身体を鍛えるほどの、正にバリバリの英雄です。そこでCMではまったく逆に、腕っ節も正義感もさほど強くなく泣き虫、という設定にしました。