「早大のガイドラインの質はとても低い」

元防止室勤務の女性は「現場の相談員は混乱してしまっていた」とも説明する。

「経験者として、こういった職務は有資格者や訓練を受けた人がやるべきだと思うのですが、早大の防止室は全員が未経験者でした。相談員は非正規なので、定期的に採用しなおしますし、職員も定期異動で入れ替わります。対応を検討する際も、『こういうときはこうするべき』と詳細に記されたマニュアルがあるわけではなく、ホームページで公開されている簡素なガイドラインしかありません」

南弁護士も「早大が公開しているガイドラインを読み、早大はハラスメントを重大な問題としてみる意志が乏しいと感じました」と話す。

「ガイドラインの質はとても低い。組織の仕組みなどが書いてあるだけで、特に判断基準が示されていないのが問題です。他大学では、たとえば関西大学は詳細なハラスメント防止ガイドラインを公開しており、厳格なハラスメント規定を定めています。ガイドラインがしっかりしていれば、被害者だけではなく、相談員も安心して仕事に取り組めるのです」

早大広報課はガイドラインの質が低いという南弁護士の指摘について「真摯に受け止めます」とコメントしている。

防止委員会のパンフレット。「専門の相談員が相談者のプライバシーに十分配慮しながら丁寧に相談を受け付けています。相談内容が本人の許可なく他者に伝わることはありません」と書かれている。

相談員はウソの説明で、証拠のメールを提出させた

プレジデントオンラインは過去に防止室を利用し、苦情申立書を提出した経験がある早大の現役女子学生にも話を聞いた。女子学生は、男性教授からのハラスメントに関して、ハラスメント防止室に相談に行った。その際、防止室はハラスメントの証拠としてメール等のやり取りを提出するように求めたという。

女子学生によると、メールの中にはどうしても見られたくない内容があった。しかしその後相談員が「見せられるものだけを提出すればいいから」と繰り返し説明したため、証拠のメールを印刷し、一部を黒塗りにしたうえで、工夫して提出した。

しかしその後、女性は防止室の対応に大きな衝撃を受けたと話す。

「相談員とは別の当時の委員長から、メールなどの証拠について『男性教授側から全部見せてもらった』と直接伝えられました。当初の話とは違うと思い、個人情報管理について質問しましたが、説明を拒まれました」

南弁護士は「いろはの“い”が守られていない」と怒る。