前委員長「私はもう関係ないので、お話しすることはない」
「ハラスメント被害者にとって、自分が持つ情報のコントロールがどこにあるのか、ということはとても気になることです。そんなことはハラスメントに関わる人間であれば、いろはの“い”のはずです。だからこそ、大学として正式に調査するためには『ここまでの情報を大学側に提出してほしい』と丁寧に事前説明する必要があります。女性側からみれば、『自分が経験した忌々しい体験をそこまでさらけ出さないといけないなら、正式な調査は依頼しません』となってしまう場合もあるのです」
元防止室勤務の女性に確認したところ「情報管理の方法について、上司から詳細な手順を説明されたこともありませんし、ガイドラインに記載されていたわけでもありません。私自身も意識していませんでした」と振り返る。
プレジデントオンラインはハラスメント防止委員会の前委員長として渡部直己元教授の事案に関わった菅原教授にコメントを求めたが、「大学のほうに行ってほしい。私はもう関係ないので、お話しすることはない」との回答だった。
防止室には昨年度191件の相談が寄せられている
南弁護士は「今の早大防止室は、『あきらめさせ機関』になってしまっている」という。
「被害を訴えている申立人に対して大学が決めたフォーマットで『苦情申立書』を提出させたり、代理人により提出を原則認めていなかったり、申立人に対して非常に負担をかけています。これでは申立人をあきらめさせるためにあるような機関になっています。そもそもハラスメント防止室は裁判所のように法律的な対応をする場ではありません。あくまでもさまざまな案件を汲み取り、そういった生徒や教員がどうやったらつらい思いをせずにキャンパスライフを送れるようにできるか、それを考え、実行する場のはずです。その考えが早大には欠けているように感じます」
早大広報課によると、昨年度、防止室には191件の相談が寄せられ、そのうち9件が申立された。委員会も9回開かれたという。はたして、これが被害のすべてだったのだろうか。