教員同士によるハラスメントは「手に負えない」と不受理
女性は「委員長と副委員長2人に加え、数名の相談員で毎週ミーティングを開き、その場で委員長と副委員長で申立を受理するかどうかを決めていました」と証言する。これに対し、早大広報課は「そうした事実はありません」と反論している。だが、女性は「議事録が残っているはずなので、それを見ればわかるはずです」と述べる。
どんなケースが不受理となるのか。女性はこう話す。
「申立の中には言いがかりのようなものもあり、そういったケースは委員長権限で不受理を決定していました。その一方、あくまでも私の感覚ですが、明らかに問題だと思われるケースも不受理にしていました。私が記憶しているのは教員同士によるハラスメントです。『教員同士のトラブルにまで手をつけてしまうと、手に負えない』という判断でした」
弁護士「早大の体制では『握りつぶし』を防ぎきれない」
早大のハラスメント相談窓口の仕組みについて、なんもり法律事務所(大阪市)の南和行弁護士は「これではスキャンダルを大学側が握り潰せてしまう」と指摘する。南弁護士は、同級生から同性愛者であることを暴露(アウティング)され、一橋大の大学院生が2015年8月に校舎から転落死した「一橋大学アウティング事件」で遺族側代理人を務めている。
「ハラスメントの救済プロセスとして、多くの大学では早大と同じく、相談室が受けた相談を委員会に申し立てるという2段階体制を採り入れています。しかし規定を読む限り、早大は防止委員会の委員長の職務と防止室長の職務を混同しており、制度の趣旨を誤解しています。防止室にはスキャンダルも集まってきます。本来の2段階体制では、経営とは離れている多くの委員に事案を見てもらうことで、一部の人間によるスキャンダルの握りつぶしを防ぐことができますが、早大では職務が混同されていて握りつぶしを防ぎきれないでしょう」
「本来は完全に外部の有識者や弁護士が委員長を務めるべきです。ただし、フルタイムでこの仕事に就いてもらえる委員長を探しづらいことは理解します。しかし、早大のような大きな大学なら、委員長はしがらみのない外部の弁護士にやってもらったほうが、委員の報酬などのコストがかかっても、公平性を保つ意味でいいと思います」
ハラスメント防止委員会の委員長は9月21日付けで早大法学学術院の菅原郁夫教授から同学術院の内田義厚教授に代わっている。来年、新しい外部窓口を設置した後も、内田教授がそのまま委員長に就く方針だ。