一方、女性役員が増えない理由を、「日本では女性が異質すぎるから」と指摘するのは早稲田大学大学院の谷口真美教授だ。
「人間の属性は性別以外にも学歴や職歴など様々な要素があります。たとえ性別が違っても、他の属性で重なる部分があれば、男性の中に女性が入っても共通の経験や考え方を土台に議論ができる。たとえば、利益向上の実践スキルを求める米国では、マネジメントを目指すならMBAが必須で、女性も取得する人が多い。また企業を渡り歩く。すると男性とビジネススクールで一緒だったり、職歴で重なる部分も増え、共通項ができる。そのため女性が企業の中で異質すぎることがないので、経営ボードに入り込みやすいのです」そして「今後は日本でも経営者に求める資質が米国に似通ってくれば、『キャリアの途中でビジネススクールに通ってMBAを取得した』といった“第二の学歴”が、女性の出世にも利いてくるかもしれない」と話す。
さらに、「女性が組織の中で上を目指すなら、ある時点で求められるスキルが変わることを知っておくべき」とアドバイスする。
「女性を含めたマイノリティが出世するには、個人として識別されるために、マイノリティ同士の競争で抜きん出て、マジョリティに自分は優秀だと認めさせる必要があります。しかしマネジメントに抜擢されたら、今度はチームを率いて他人と協力したり根回しや折衝をしたりと、それまでとはまったく別のスキルが必要になる。ところがそれに気づかず、執行役員や事業部長になっても周囲と競争し、のし上がろうとして失敗する人が多い。これは米国の経営幹部のキャリア研究でも明らかになっています」
ロールモデルが少ない女性リーダーのキャリアは、まだ試行錯誤の段階にあるといえそうだ。