大ヒット絵本は「次男のおもらし」から生まれた
この日は、5月に発売された『おしっこちょっぴりもれたろう』(PHP研究所)の印刷前の最終チェックをしていた。おしっこをちょっぴりもらしてお母さんに怒られてばかりの男の子を描いた作品で、モデルはヨシタケの次男だそうだ。
ヨシタケ「トイレ行って帰ってきたら“ジワーーッ”と。それを見て嫁が心底ため息をついていて思いついた話です」
1973年神奈川県茅ヶ崎の生まれ。妻と育ち盛りの2人の男子と4人暮らしをしている。外食はめったにせず、毎朝毎晩家族そろって食卓を囲む。ヨシタケにとっては、こうした日常こそが発想の原点でありインスピレーションの宝庫らしい。たとえば考えごとをする時に、子供はつい鼻をほじるものだ。「一体その理由はなんだろう」というテーマで1冊描いたこともある。
小さな原画を拡大して絵本に
仕事部屋で新作のラフスケッチを見せてもらうと、その小ささに驚かされた。絵本は一般的に、大きく描かれた原画を小さくして作られるが、ヨシタケの場合は原画が小さすぎるため、パソコンに取り込んで拡大するのだ。
巨大な手から生み出される、小さな小さな原画。しかも、線は恐ろしく薄い。訳を尋ねると、大学を卒業後に、半年だけ経験したサラリーマン生活が関係しているらしい。仕事のストレスがたまるたび、周囲に気がつかれないように、こっそり小さなイラストを描いて発散していたそうだ。そのせいで、大きな絵が描けなくなってしまった。書くのは妄想や、ふと気づいたこと。毎日のように書きためたイラストは7000枚を超え、絵本作家となった今では、大切な創作メモとなっている。
絵本が出来上がると、まず家族に見せる。妻と二人の息子が全員集合して新作絵本を読み感想を伝え合うのがヨシタケ家の恒例行事だという。