企画はゴーサインでも安心できない
最初の提案からひと月あまり、アイデアを練り直したラフスケッチを手に、再び出版社を訪れた。タイトルは『ころべばいいのに』。
主人公の女の子には嫌いで嫌いでたまらない男の子がいる。
しょっちゅうイヤなことばかり仕掛けてくるアイツ……
あるときふとこう考える。
ひょっとしたら影でアイツを操っている「何か」がいるのかも。
その「何か」がアイツに嫌がらせをさせて、彼女のため息や怒りや悲しみをお金に換えているに違いない……だったらめげないことが仕返しだ!
しょっちゅうイヤなことばかり仕掛けてくるアイツ……
あるときふとこう考える。
ひょっとしたら影でアイツを操っている「何か」がいるのかも。
その「何か」がアイツに嫌がらせをさせて、彼女のため息や怒りや悲しみをお金に換えているに違いない……だったらめげないことが仕返しだ!
必死のプレゼンの結果、企画にはゴーサインが出た。でも、まだ安心はできない。なにせ編集者は厳しいのだ。
「大事なものって何だろう」
ある日、カフェでスケッチにいそしむヨシタケがふっと顔を上げ、ワクワクが止まらない様子で、スタッフに話しかけてきた。
ヨシタケ「新しい絵本の企画ができましたよ。うふふ。あのね、どんなことを考えたかというと……」
イラストを交えながら、取材ディレクターを前にちゃめっ気たっぷりで話し始める。
ヨシタケ「“インタビュー星人”っていうのが出てきてね。地球人に密着取材し、根掘り葉掘り聞くんですよ。なのに、終わってできあがったら全部火の中に捨てちゃうんです。やってきたこと全部お蔵入り。そうすると撮った側も撮られた側も嫌な気分になりますよね。それって、なんで嫌なんだろうと考えると、地球人は“残す”ということに価値を置いているということがわかるんです。そうすると“大事なものって何だろう”というテーマの本ができるんです」
お見事! ヨシタケいわく、妄想でストーリーを紡いでいく中で、本の根幹にかかわる部分を発見する瞬間が何より大切なのだそうだ。
こうして、絵本作家ヨシタケシンスケは今日もヘンテコなことを考えている。大人も子供も夢中にさせる内気な天才は、これからも豊かな妄想力で私たちを未知の世界に連れて行ってくれるのだろう。
「情熱大陸」はスポーツ・芸能・文化・医療などジャンルを問わず各分野で第一線を走る人物に密着したドキュメンタリー番組。MBS/TBS系で毎週日曜よる11時放送。MBS動画イズムで無料見逃し配信中。過去の放送はこちら。https://dizm.mbs.jp/title/?program=jounetsu
ヨシタケシンスケ
絵本作家
1973年神奈川県生まれ。筑波大学大学院芸術研究科総合造形コース修了後、半年ほどのサラリーマン生活を経て、昼間は広告美術やコマ撮りアニメの人形製作、夜はイラストを描く仕事を14年続ける。40歳の時『りんごかもしれない』で絵本作家デビュー。第6回MOE絵本屋さん大賞第1位、第61回産経児童出版文化賞美術賞。『りゆうがあります』『もうぬげない』『このあとどうしちゃおう』ほか著書多数。
絵本作家
1973年神奈川県生まれ。筑波大学大学院芸術研究科総合造形コース修了後、半年ほどのサラリーマン生活を経て、昼間は広告美術やコマ撮りアニメの人形製作、夜はイラストを描く仕事を14年続ける。40歳の時『りんごかもしれない』で絵本作家デビュー。第6回MOE絵本屋さん大賞第1位、第61回産経児童出版文化賞美術賞。『りゆうがあります』『もうぬげない』『このあとどうしちゃおう』ほか著書多数。