新製品だけでなく、馴染み深い定番の味も求めている
いまのカルピスのキャッチコピーは〈カラダにピース〉。だが、『濃い目のカルピス』と『カラダカルピス』を手に取る世代は〈初恋の味〉のほうが馴染みがあるかもしれない。
昭和生まれの30代、40代は『濃い目のカルピス』と『カラダカルピス』を通して〈初恋の味〉との再会を果たした。その再会がカルピス好調を支えている、といっても過言ではないようだ。佐々木さんはいう。
「お客様は新製品だけでなく、馴染み深い定番の味も求めています。いかにカルピスにプラスオンしてラインナップを増やしていくか。カルピスブランドの間口を広くして、たくさんのお客様に楽しんでいただきたい」
社内にも社外にも好きな人がたくさんいる希有なブランド
今年8月、佐々木さんはカルピスブランドのマーケティングスタッフとともに、中国内モンゴル自治区ヘシグテン旗を訪れた。
「カルピスにたずさわる誇りを再確認したかった」と佐々木さんは語る。
彼の地は、100年前にカルピスの産みの親・三島海雲が旅した草原である。カルピスを産んだ草原に立てば、三島海雲の思いに少しでも触れられるのではないかと考えたのだ。
「先人が築いてくれた事実がなければ、時代に合わせてカルピスブランドをアップデートすることもできない。私たちは原点に立ち返ってカルピスの成り立ちを学び直して、ブランドを磨き続ける必要があるのです。社内にも社外にもカルピスを好きな人がたくさんいる。希有なブランドだと実感しています」
来年、カルピスは誕生100周年という節目を迎える。大正、昭和、平成と三つの時代を生きぬいた長寿ブランドは、新たな時代でも愛されるはずだ。
ノンフィクションライター
1977年、山形県生まれ。東北学院大学法学部法律学科卒業後、國學院大学二部文学部史学科に編入。大学在学中からフリーライターとして活動。著書に『カルピスをつくった男 三島海雲』(小学館)、『それでも彼女は生きていく3・11をきっかけにAV女優となった7人の女の子』(双葉社)などがある。Twitter:@toru52521