しかし鳥貴族がこうした戦略を採用するとは考えづらい。スシローや吉野家、ミスドなどが非専門分野でそれなりに成功しているのは、それぞれの専門分野で確固たる地位を築けているためだ。そうでなければ、非専門分野の品質を保証することはできない。
鳥貴族には勢いはあるが、鶏居酒屋として確固たる地位を築いているとまではまだいえず、そうした中で非専門分野を強化するのは危険だろう。ブランドイメージをブレさせるだけで終わる可能性が高い。
また、非焼き鳥メニューを極端に強化してしまうと鳥貴族が総合居酒屋化してしまい、業界のトレンドを逆行することになりかねない。将来的には総合居酒屋が息を吹き返す可能性があるとしても、現時点ではその兆しは見えていない。現状の居酒屋業界では取りづらい戦略といえよう。
別業態を確立してリスク分散を図るべき
鳥貴族は専門居酒屋としての弱さを補うために、鳥貴族以外の業態店を確立する必要があるのではないか。同社は鳥貴族の単業態での展開を進めているが、そこで変調をきたし、逆に非焼き鳥メニューを強化することもベストではない以上、業態ごと別に確立してリスクの分散を図る段階にきていると筆者は考える。
エー・ピーカンパニーは塚田農場などの地鶏業態への過度な依存を避けるため、海鮮居酒屋「四十八漁業」や「やきとりスタンダード」などの非地鶏業態を増やしてきている。鳥貴族も同様に、非焼き鳥業態を確立する必要があるのではないか。
もっとも、鳥貴族が非焼き鳥業態を確立するという戦略は中長期的な収益を安定・改善させるためのものであって、短期的な視点のものではない。新たに業態を確立するには時間がかかる。短期的な視点の施策も別に必要だろう。