それにはやはり、鳥貴族の大胆な改革が欠かせない。鳥貴族は今期(19年7月期)の方針として、新規出店を抑え、既存店のてこ入れに注力することを掲げている。付加価値の高い新メニューを開発するほか、調理技術や接客力を高めて既存店の収益を改善させる考えだ。

ただ、これだけでは、抜本的な改善には至らないだろう。調理技術と接客力を高めることは必要なことだが、それだけで大きな改善が達成できるとは考えにくい。付加価値の高い新メニューの開発ももちろん必要だが、焼き鳥はハンバーガーやラーメンなどと違ってアレンジがしづらい商材のため、これによる改善も限定的だろう。結局のところ、どうしても価格が重要な意味を持たざるを得ない。

そこで、思いきって価格を280円に戻してはどうだろうか。値上げが間違っていたことを認めるのだ。そうでもしないと、客離れを止めることはできないのではないか。

多少のコスト増は吸収できる体力を持っている

値上げでコスト増をカバーし利益率を改善することができたとしても、客数が減って売上高が減ってしまえば、利益の“額”がかえって減ってしまうこともある。それでは値上げした意味がなくなってしまう。同社はもともと高い利益率をたたき出しており、多少のコスト増であれば十分吸収できる体力を本来はもっている。それゆえ、客数が回復すれば280円でも十分やっていけるだろう。

いずれにしても、大幅に客数が減っている現状を鑑みると、抜本的な対策を喫緊に講じることが必要不可欠だ。大胆な決断と迅速な対策の実行が求められる。

佐藤 昌司(さとう・まさし)
店舗経営コンサルタント
立教大学社会学部卒業。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。店舗型ビジネスの専門家として、集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供している。
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