十両の月給は100万円、さらにベースアップも

海外から来る力士と言えば、モンゴル相撲で実績があったとか、ブルガリアでレスリング国内王者だったとか、ハワイでアメフトをしていたとか、何らかの運動経験・実績をひっさげている。日本人の入門者はそういうのがいない。

タカ大丸(著)『貧困脱出マニュアル』(飛鳥新社)

相撲の世界は序ノ口から始まる。そこから序二段、三段目、幕下とあがっていき、十両からお金をもらえるようになる。さて、ここで問題です。十両になったら毎月いくらもらえるでしょう? 私は、周囲のあらゆる友人・知人にこの謎かけをしてみた。

「え、せいぜい20万か30万くらいじゃないですか?」
「いっても50万かなあ」

このあたりの答えが多い。残念ながら不正解である。それくらいなら、私が勧めるはずがない。正解は「100万円」である。私が知る限り、何のとりえもない中卒が月収100万円を目指せる可能性がある職業など、たぶん相撲取りしかない。

しかも、これはあくまでも「基本給」である。それに加えて年に2回「餅代」と称したボーナスがつく。つまり年収は100万×12ではなく、100万×16なのだ。

さらに勝ち越し分の手当て、もう少し上に行くと懸賞分も加算される。たとえば、ひとつの場所を10勝5敗で終えたとする。とすると勝ち越し分は5となる。これに勝ち越し分1につき50銭が加えられる。そして現代はこの50銭を4000倍して計算するので、2円50銭の4000倍、つまり1万円が引退までずっと月給に加えられ続けるのだ。8勝7敗なら50銭、9勝6敗なら1円50銭だ。

それから忘れてはならないのが「金星」である。幕内に入り、平幕力士が横綱を破ることを「金星」というが、金星をひとつ上げるごとに基本給が10円加算となる。これも先ほどと同じく4000倍するので手当が月4万円増え、これが現役生活中ずっと続く。友人の某都議会議員が思わず「そんなベアを勝ちとれる労働組合なんかどこにもありませんよ」とつぶやいたが、その通りである。

昔、安芸乃島という力士がいた。最高位は関脇だったが、彼は生涯で金星を16個あげた。つまり、基本給に加えて手当が毎月64万円支給されていたということである。娑婆の仕事のなんとか手当で2万円とか3万円というのは聞いたことがあるが、毎月60万円以上手当てがつく職業など、相撲取り以外にはありえない。